契りシリーズ。清川望編 やったよ!とうとう自己新記録が出たよ。 随分と長い間、記録が伸び悩んでいたんだけど、ここに来て、ようやく調子が戻って 来たみたい。 やっぱりあれかな?寮を出てプライベートの時間に余裕が出来たからかな? 寮生活は嫌いじゃないんだけど、相部屋だったから、どうしても緊張してしまうから な。 だいたい、実業団、それも天下のM'sスポーツの寮が相部屋だなんて思わなかったか ら、最初は戸惑ったもんな。 「ただいま」 私は自分の「家」のドアを開ける。「家」と言っても、ごく普通の1DKのアパート なんだけどね。しかもあいさつまでして。 (これがどういう事かと言うと、・・・まあ、説明すると長いので、おいおい説明する けど)中から返事が返ってくる。 「あ、お帰り、望。早かったね」 「うん。今日は残業はなし」 実業団に入ったと言っても、正式な身分はOL(笑)だから、練習が終わっても、残 業があったりするんだよね。今日はない日なんだ。 私を出迎えてくれたのは、私と同じ歳の男の子、・・・ううん、男性。 同じ、きらめき高校出身で、・・・・その・・・一応、恋人って事になるんだ。 卒業式の日、私はありったけの勇気を込めて、彼に告白した。駄目で元々だったんだ けど、彼は私を、こんな私を受け入れてくれた。もう嬉しくって、泣いちゃったんだっ け。 その後、私は実業団へ入り、彼は大学へ行った。離ればなれの生活が2年間続いた。 そんな生活に転機が訪れたのが約半年前。スランプに陥っていた私に、彼はアドバイ スしてくれたの。 「寮を出てみれば?」 って。 最初、それは私にとって難しい事だと思った。寮を出ること自体は難しくはなかった んだけど、出てからが問題。だって私、自分でも情けないとは思うんだけど、料理とか 洗濯とか、つまりそう言った家事の類が、まったく駄目なんだ。 部屋が汚れるとか、散らかるとかはいいんだけど(良くはないか)やっぱり食事は、 ちゃんと取らないといけないのよ、栄養なども考えないといけないし。食べることから 身体作りは始まるんだからね。 そういう事って、本当はとても大切なんだよね。それが出来ないんだから、一人暮ら しなんかとても無理だって思ってたんだ。 そうしたら彼、 「だからさあ、俺が家政婦をするんだよ」 って言ったんだ。 「何それ?」 聞き返した私に、彼ったらウインクしてこう言ったんだ。 「大学から俺のアパートの帰り道付近に、部屋を借りてくれれば、講義の帰りに寄っ て、掃除や食事の世話ぐらいやってあげられるぜ。 まあ、洗濯ぐらいはやってもらうけど・・・」 そりゃ下着があるから、洗濯は寮でも自分でしていたけど、彼にそこまでしてもらう のは、・・・と思ったんだ。 でも、 「望のためなら、このぐらいの事なんでもないよ。いや、望の力になれるなら、ぜひ、 やりたいんだ」 真剣な表情の彼に、私も決心した。 「うん、お願いするね」 彼はけっこうマメで、毎日のように私の部屋に来て、身の回りの世話をしてくれる。 料理のレパートリーも広くて、美味しいし栄養のバランスも考えてあるし、言うこと ないぐらいなのよ。 部屋だってきれいにしてくれるし、・・・実はもう洗濯もお願いしてたりして。 あっ、それでも下着だけは別よ。 そういうのがすごく助かっているの。 でも、いわゆる恋人同士としての進展は、全くないのよね。 それが寂しいと言うか、少し不安。だって男の人って、・・・その、したいって思うん でしょ?二人っきりになったら、そういう気になりやすいんでしょ? でも、彼にはそういう事、全然ないみたいなんだ。 彼も一人暮らしだから、夕食を一緒に食べるんだよね。それで彼は帰っちゃうの。 もちろん、翌日が休みだったり、時間が許せばTVを見たりするんだけど、絶対に 泊まっていったりはしないのね。 そりゃ、手をつないだり、肩を抱いたり・・・KISSぐらいはするけど、それ以上は何 もない。 いくら、離ればなれの期間があったからって、付き合って3年近くになろうって言う のに・・・。 べ、別に興味本意とか、ただ、したいってわけじゃないんだ。ただ、私って、女の子 として魅力がないのかな?だから、そういう気がおきないのかな?なんて、不安になっ てしまうんだ。 「どうしたんだ、望?料理、美味しくないの?」 夕食をしながら、そんな事を考えていた私は、彼の心配そうな声に、ハッと我に帰っ た。 「ううん。そんなことないよ。すごく美味しいよ」 「そうかい、それならいいんだけど」 心配そうな顔で彼が言った。 私、馬鹿だよね。彼はいつもいつも、私の事を思ってくれているのに、そんな風に考 えるなんていけないよね。 でも、私は彼に何もしてあげられない。彼の世話になっているばかり。 以前にも聞いたことがあったんだけど、 「望が水泳で活躍してくれるんなら、このぐらいなんでもないよ」 と言ってくれた。 だから、私も頑張る事が出来るんだよね。でも、それだけでいいのかな? 「そうか、自己新記録か。調子上がって来たみたいだね」 「うん、あなたのおかげだよ」 「俺なんか大した事してないよ。望が頑張ったからじゃないか。次の選手権、オリンピ ック代表の選考会も兼ねてるんだろ?」 「うん」 「今でも頑張ってるんだから、これ以上頑張れなんて言えないから、少し肩の力を抜い て行こうな。望ならそれで充分いい成績を残せるさ」 「うん、ありがとう」 この彼の一言が嬉しいんだよね。頑張れとは言えないと言われても、頑張っちゃうん だろうな。きっと私。 「明日、学校お休みなんでしょ?もう少し一緒にいて」 帰り支度をしようとした彼に、思い切って私は言った。 「え?・・・ああ、いいよ。バイトが午後からあるけど、大丈夫だよ」 彼ったら、驚いたような顔をしてる。 あーー!なんだか私らしくないことを言っちゃったなぁ。だって、本当に一緒にいて 欲しかったんだもん。 私が今日、自己新記録を出せたのも、彼がいたから。彼がいるから私は競技に専念で きる。そう思うと彼が愛しくてたまらない。わがままだとは知っているけど、彼と少し でも長くいたいの。 彼は、私のそんなわがままも笑って許してくれた。そして私たちはビデオに録ってあ った映画を見たんだ。 それは私の好きなラブロマンス。ベッドを背もたれにしてカーペットに座って見てい たんだ。 登場人物の男女が結ばれるシーンでジーンと来た私は、右隣にいた彼の左肩に頭を乗 せた。すると彼が、背中越しに私の肩に左腕をまわした。 彼の手のひらの体温を左の肩で感じた私は、無意識のうちに右腕を彼の腰へとまわし ていた。彼が反応したのはその時だった。 しばらく、ためらったように目をきょろきょろさせていたんだけど、映画の途中だと いうのに突然立ち上がり、こう言ったの。 「ごめん、望。やっぱり、俺、今日は帰るね」 えーー!?ど、どうして? ううん、原因は判ってるわ。きっと私が甘えた素振りをしたからよね。 帰り支度をはじめた彼の背中に、私は思わず言ってしまった。 「私って、そんなに女の子として魅力がない?・・・ううん、そうよね。私なんて」 「やめろよ。そんな言い方!」 (怒った?) 「ご、ごめんなさい」 私は謝った。彼は振り返り、微笑みながら私に言った。 「その全く逆だよ。望」 「逆?」 「そう、逆。望のように素敵な女の子と二人でいて、自分を抑えるのにどれだけ苦労し てるか、望は知らないだろ?」 彼が何を言っているのか、さすがの私にも判る。 「このままでいたら、自分を抑える自信がないから帰ろうと思ったのさ。望のせいじゃ ないよ」 「どうして?」 「え?」 「どうして自分を抑えないといけないの?・・・私なら・・・いいのよ」 わ、私、何を言い出すんだ?・・・でも、これは、私の本心、そう紛れもない私の本心。 「・・・望、自分が何を言っているのか判っているのか?」 「もちろん、判ってるわ。あなたになら・・・ううん、あなただからこんな事が言えるの よ」 それは私の心からの叫びだった。でも、彼は顔を背ける。 「・・・駄目だよ、望。君は将来を嘱望されるオリンピック候補なんだよ」 彼は顔を背けたまま言った。でも、私も止まらなくなっていた。 「いや」 「え?」 「いや!あなただけにはオリンピック候補だとか、水泳選手だとかという目で見て欲し くない!私は清川望!ごく普通の一人の女の子よ!どこにでもいる女の子の一人として 私を見て!お願い!」 「・・・望」 彼はそう言って、そのまま私を抱きしめた。 「ごめん。俺が悪かった。望は望なんだよな。・・・いいんだね?」 「うん」 私はそう言ってうなずいた。 「お願い、電気を消して」 「ああ」 シャワーを浴びた私は、バスタオルを巻いて彼が待つベッドへと腰掛けた。 彼が照明を消し、暗くなった中で、私の横に腰を下ろし、私の肩に手をまわした。 うわーー、心臓が爆発しそう。 「望」 彼はそう言って私の唇に唇を重ねる。 うわ!舌が入ってきた。でも全然気持ち悪くなかった。私も思わず彼の舌に自分の舌 を絡める。 「ん、む」 声にならない声を出しながら、私たちはベッドに横になる。優しい手つきで彼が私の バスタオルを取る。お父さんお母さん以外、誰も見たことがない、一糸まとわぬ私の身 体。 「きれいだよ。望」 「いや!見ないで」 そんな事をしても意味がないと知ってはいても、私は両手で自分の顔を覆う。 「ずるい」 「え?」 「私ばっかり、・・・あなたも脱いで」 「ああ、そうだね」 こんな時、私は手伝うべきなんだろうか?どうしていいか判らないうちに、彼は自分 の服を脱いだ。 「望」 そう言って彼は、再び唇を重ねる。その彼の唇が、やがて私の顔の上を移動しはじめ る。目、鼻、まゆ毛、あご、おでこ、そして耳。 やだ、声が出ちゃう。 彼はそんな私を見透かしたように、耳もとでそっと囁いた。 「声が出そうになったら、出していいんだよ」 ああーーん。そんな事言ったって、恥ずかしいよーー。 私がそう思っても、彼の攻撃(?)は止まらない。私の耳元で囁いた彼の唇は、私の 首筋を経て、左胸の・・・を含んだ。 「あっ!」 私の意思とは関係なく、私の口から声が漏れた。それが加勢になったように、私の胸 に刺激が伝わる。 「あっ、やだっ」 何を言っているのか私にも判らない。まるで口が全然違う生き物になったみたい。 彼の手が私の顔を優しく撫でる。その、少しごつごつとした指が私の口に触れた時、 無意識のうちにその指を口に含んでいた。 指を舌で絡める。彼も私の舌をもてあそぶかのように指を動かす。 「はあ、むぐ」 私の声は、もはや声になっていない。でも、声が出てしまうんだ。 私が自分の身体を持て余しているうちに、彼は空いた手で(左手だと思うんだけど、 もう、何がなんだか判らなくなっているの)私の右胸を優しく揉み出した。 「ああん」 もう、自分で自分の身体が制御できないよ。新しく加わった右胸の刺激に、私の身体 は海老ぞっていた。 私には、彼の首に両手をまわすしか出来なかった。そしてなんだか悔しかった。 何故って?だって、彼、すごく落ち着いてるんだもの。慣れてるみたい。 そうよね。彼、高校時代もてたもん。私が初めてじゃないんだろうな。・・・でもい いの。今、私だけ見ていてくれれば。それでいいの。 そんな風に、私が自分に言い聞かせているうちに、彼の手が(右か左かなんて判らな いの!)私の一番大切なところへやって来た。 「だ!駄目!」 私はそう言ったけど、彼の手は止まらない。そして「私の中」に何かが入ってきた。 「ひっ!」 彼の指が、私の中の壁をまさぐる。 「あん、あ!そこは、・・・もっとぉ!」 何を言ってるのか、自分でも全然判らない。 そのうち、私の中に別の指が入ってくる。 ピチャピチャ、クチャクチャ。 猫がミルクをなめるような音が聞こえてきた。・・・まさか、そんな!? 私がそう思っていても事実は変わらない、それは私自身が出している音なんだ。 暗闇で見えないと思うけど、今、私の顔は真っ赤に染まっているでしょうね。 「ああん!や、やあ!」 本当は嫌じゃない。でも、口がそう言ってしまうんだ。 そうしているうちに、彼の顔が私の下へ降りて行く。しかも、手で私の胸を揉みほぐ しながら(!?)。おへそから脇腹、そして・・・ 「はああん!」 もう駄目。私の中で何かが切れた。 私の一番敏感な部分を、彼が(きっと舌でね)刺激を加えた時、私にはもう、何が自 分におきているのか判らなくなっていた。 電流が走り、身体中が小さく痙攣している事だけは判った。 その内、何かが波となって、私を襲って来た。その波が私の意識を押し流して行った 後で、私が気が付いた時、彼は私から離れていた。 (何してるの? やだ。そばにいて) 私は思った。そして、それはきっと本能から来るんだろう。次に彼にして欲しい事を 私は息も絶え絶えに、声に出してしまった。 「ねえ、・・・来て」 彼は私の上に覆い被さる。だけど、彼はなかなか私の中に来てくれない。 私自身でも信じられない事に、私は右手で彼を自分に誘導していた。 (あ!?) その時、私が感じたのは、人肌とは違う人工的な肌触りだった。 固くて熱い彼自身には、薄いラテックスがつけられていた。 (そうか、これをつけていたのね) それは彼が私の事を大切に思っているという事なんだと思うと同時に、いつも、持ち 歩いているの? という疑問にもぶつかったが、もう気にならなかった。 両手を広げ、彼を迎える。 「あ・・・あーーー!!」 痛くないと言えば嘘になるかも知れない。だけど、私にはそれ以上のものが、下半身 から込み上げていた。 彼の熱い彼自身が、私の中に入って来る。もう駄目。何がなんだかわからない! 「や!ああ!んぐ!はああんん」 頭の中が真っ白になるかと思ったその時、彼が不意に動きを止めた。 腕立て伏せの様に、ベッドに腕を立てて、私とのつながりは下半身しかない。 そして彼は、まるで息を整えるように、ピクリとも動かない。 そうしているうちにも、私の心臓や下半身は私の意志を離れ暴走した。 「やだ!意地悪しないで!」 「うわ!」 彼の声を聞いたような気がしたけれど、よく覚えていない。気が付いたら、私はベッ ドに仰向けになった彼の上に乗っていた。 「はあ、はあ、はあ」 水泳をしている時とは全く違う荒れた息をしながら、私は彼の上で腰を前後上下に動 かしていた。 だめ、もう自分を抑えられない。 だけど、それは長く続かなかった。 「うっ!」 彼がそう言ったかと思うと、私の膝を掴んでいた両腕に力が込められた。 彼の身体のあちこちが、小刻みに震えている。 「ど、どうしたの?」 心配になった私は、急に冷静なっていた。 「ご、ごめん、望」 ど、どうしたのかな? 「・・・あ!」 ひょっとしてと思いついた私の声に、彼もうなずく。 「・・・そう、もたなかったの。ごめんな」 「なんで謝るの?」 「だって、早かっただろ」 優しく身体を離しながら彼が言った。 「そんな事、気にしなくて良いのに・・・」 私がそう言うと、彼は私を抱きしめる。 「俺さ、初めてだから、どうしていいか判らなくって・・・」 「嘘」 「ひどいなあ、嘘じゃないよ。望が始めてだよ」 「ほ、本当に?ちょっと、信じられないな」 「なんでだよ?」 「だって、あんなに上手だったのに」 「上手?」 あ!私の顔が赤くなるのが判る。 「気持ち良かった?」 なんで、そんな事聞くのよーー。恥ずかしいじゃない。 「気持ち良かったの?」 同じ事を聞いた彼に、私はコクリとうなずく。 「・・・初めは痛いって聞いてたから、不安だったんだけど。そんな事なかったよ」 「そうか、良かった。この次はもう少し頑張るからな」 「うん。一緒に頑張ってこうね」 「ははっ」 「・・・なんで笑うのよ?」 「だって、望が言うと、なんかのスポーツの練習をするみたいだからなぁ」 「ああ!ひどい!」 そう言った私は、彼の腰にまわしていた両腕に力を込める。 「いててて、ごめん、望。謝るから力を緩めて!」 でも、私は力を緩めない。 だって、この人が好きなんだもん。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おわり 後書き 当初、この話、清川のテーマはスポーツライクなSEXでした。 決して誰とでも、と言うわけではなく彼女のSEXは、きっとカラッとしていて爽やか なものになるんじゃないかな? と思ったわけです。 それは軽く考えているというわけではなく、真剣に相手を思っていながら、明るくSEX するだろう、と言うことです。 私の基本的な清川像は、身体を動かすのが好きな女の子、と言うもので、そんな女の 子がSEXをすればスポーツのように捉えるだろう。 これが、この話の基本的な骨格です。 そのため、この中の性描写は、シリーズの中でも、かなり突っ込んだものになってい ます。 これが、ドロっとしたものではなく、さっぱりしたものとして伝わったかどうか? その判断は、皆さんそれぞれにお任せします。