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鏡 魅羅編
「はあ、はあ、はあ。・・・お、お姉ちゃん・・・」
切なげに訴える弟、明の声に、魅羅はその耳元で囁くように答える。
「いいのよ、無理しないで。出そうになったら、いつものように言ってね」
「う、うん」
きらめき高校2年生の鏡魅羅には、中学3年の明を筆頭に6人の弟がいる。
そのせいもあって、家計は決して楽ではない。両親が共働きをするため、小学校の頃
から家事は魅羅の分担になっていた。勉強と家事の両立は大変だが、それが魅羅には当
たり前にだった。かえって親のほうが気にして、広いとは言えないが、魅羅だけには自
室を与えていた。
今、その魅羅の自室に、魅羅と明はいた。
本来、 魅羅が座るべき勉強机の椅子に明が座り、魅羅がその後ろから明を抱きかかえ
るようにしていた。
机の上には中学の教科書やノートが広げられていたが、それに手をつけた形跡はな
い。
右にシャープペンシル、左に消しゴムを、いかにもおざなりに持った明の両手は、机
の上で硬く握りこぶしを作っていた。
明の荒い息に合わせるかのように、両肩が震える。
その明を後ろから抱くような形の魅羅。その彼女の右手が、明の右脇腹から股間へ
と下ろされている。その手は明の真っ赤にそそり立つペニスを、激しくしごき立ててい
た。
明は上下揃いのパジャマを着ていたが、用を足すための前の穴から、ペニスだけを露
出させていたのだ。
「あ、お姉ちゃん!」
「出そう?」
「うん」
必死で姉のもたらす快感に耐えながら、明がそう答えると、魅羅は慣れた手付きで机
の脇にあるティッュペーパーを2枚ほど左手に取り、明の先端にそえる。
それを待っていたかのように、”ブシュッ”と言う音と共に、熱い濁流が噴き出し、
ティッュペーパー越しの魅羅の左手に、重みのある手ごたえを伝える。
明の身体はさらにビクビクと痙攣し、それに合わせて第2陣、第3陣の濁流が、最初
のそれと変わらぬ勢いでほとばしった。
室内に明の青い匂いが広がり、体の震えが収まるのを見計らって、魅羅はティッシュ
で明の未だいきり立つペニスの先端を、優しく拭き取る。
空気のように軽かったティッシュが、スペルマでずっしりと重くなっていた。
「いっぱい溜っていたのね」
感想混じりの魅羅の問いかけに、明は赤面しながら無言で頷いた。
「いいのよ。また、モヤモヤしたらいらっしゃい」
明は只々頷くだけだった。そんな明に、魅羅は優しく微笑みかける。
「さあ、宿題をしましょうね」
「うん」
明はようやくの事で、それだけ言った。
事の起こりは約3カ月前、洗濯の時、自分のパープルのショーツについていた小さな
シミに、魅羅が気づいた事だった。
普段なら気にも止めなかったろう。だが、その日は妙にそれが気になった。
彼女はいつも、家族で最後に入浴する。その時、家族全員の洗濯ものを整理し、洗濯
機にいれるのだが、この日は魅羅の後に明が入浴した。
その後で洗濯に取り掛かったのだった。
その時、無意識のうちにそういう予感があったのかも知れない。後で魅羅はそう思い
返すことがあった。
そのシミはまだ乾き切っておらず、指で触るとヌルヌルとした感触があった。
もしかしたらと思い、魅羅は、自分が使っていたタオルを洗濯カゴから取り出した。
それは明かに、自分がしぼってカゴに入れた状態とは違っており、誰かが再び絞った
形跡があった。
恐る恐る、魅羅がそれを広げると、そこには流し切れなかったのだろう、ねばねばと
した体液が染み付いていた。
推理は簡単だった。
鏡の家の脱衣所は浴室とつながっており、そこに入れば一種のプライベートスペース
となり、そこに洗濯機も、洗濯カゴも置いてある。
魅羅はそこに下着類をいつものように入れてあった。その後、故意か偶然かは不明だ
が、明が入り魅羅の下着を見つけた。
そして、それを使ってオナニーをしたのだ。おそらくショーツでペニスを刺激したの
だろう。
その迸りは魅羅のタオルで受け止めた。その時、ショーツにも飛んで付いてしまっ
た。
事が終わった後、明はタオルを洗ったが、濃いスペルマは流し切れず、さらにショー
ツに付いた小さなシミには気が付きさえしなかった。
そんなところだろう。
こういう事は前から時々あった。魅羅が学校から帰ってくると、部屋の様子に違和感
を感じることがあった。チェストの下着類を入れてある引き出しを開けると、乱れがあ
ったのだ。
最初、魅羅は気のせいだと思っていた。なくなった下着があるわけではなし、何か別
のがなくなっているわけでもない。何より、大好きな家族を疑うことが嫌だったのだ。
だが、これではっきりした。少なくとも長男の明は、自分を性の対象にしているのだ
と魅羅は悟った。
一瞬、嫌悪感が走ったが、それもすぐに消えた。
冷静に考えれば無理もない。
中学3年生と言えば、思春期の真っただ中。身近に年齢の近い女性がいれば、性欲も
湧くだろう。
ましてや、明には自分の部屋もない。弟達と一緒に生活しているから、そういう種類
の雑誌類も持てないだろうし、ビデオ類などさらに難しい事は明白だった。
オナニー自体は知っているだろうが、これほど個人のスペースがない中では、その機
会は極端に少ないだろう事は、魅羅にも判る。
それが脱衣所と言う閉鎖された部屋に、脱いだばかりの女性の下着が揃えば、10代
の性欲を抑えろと言うほうが、むしろ酷かも知れない。
魅羅はそうも思った。
だが、問題も大きい。対処が難しい。
このまま黙って見過ごすことは出来ない。性欲が歪んだ形で成長してしまい、犯罪に
走ってしまうような事態は、避けなければならない。
だが、だからと言って、どう接すればいいのか? 魅羅とて、そういう経験が豊富と
言うわけではない
結局、魅羅がたどりついた結論も、歪なものになっていた。本人は真剣に悩み、これ
しかないと言う物だったが・・・。
つまり、身内のものが、了承して事に及べば問題ない。と考えてしまったのだ。
浴室の事件から3日後。家族が寝入った頃を見計らい、明を自室に呼び出した。
何事かと、落ち着かない明を椅子に座らせ、自分はベッドに腰掛ける。
なぜか魅羅はタンクトップとショートパンツと言う、肌の露出が多い服を選んでい
た。きらめき高校で、その大人びた雰囲気で人気のある彼女である。その色香は匂いた
つようだった。実のところ、内心は緊張していたが、表面上は(少なくとも明には)落
ち着き払った態度に見えた。
対する明は、そわそわと落ち着かない。魅羅のその姿に惹かれたと言うのもあるが、
それ以上に、自分のした事が知られてしまったのかも知れない。と言う、恐怖にも似た
想像があったからだ。
『怒られる』と思い、これから自分がどんな事になるのか? と、不安におののいてい
た。
明の予感は当たっていた。だが、魅羅の口から出た言葉は、予想に反して、優しさに
満ちたものだった。
「絶対に怒らないから、正直に話して」と言う言葉に始まり、脱衣所で魅羅の下着を汚
した事を、言葉を選びながら問いただした。
表情を赤くしたり青くしたりしながら、明は聞いていたが、やがて観念したように口
を開いた。
「ごめんなさい」
それだけ言うのが、やっとで、その後は、ポロポロと泣き出してしまった。
魅羅はゆっくりと立ち上がり、明の前でしゃがみ込む。明の顔を見ながら、優しく言
った。
「いいのよ。男の子だから、しょうがないわ。
・・・だけど、いけない事だって言うことは、判るわよね?」
明のうなずきを見て、魅羅は明の横に立ち、机の引き出しから1冊の本を取り出し
た。
「お姉ちゃん、女の子だから、男の子の事良く判らないから、こう言った本を読んで、
一緒に勉強していこう、ね?」
魅羅の手に持った本を、明は見た。それは男女の性に関する事を、真面目に解説した
本だった。
それによって、性に対する正しい知識を得ようと言う、魅羅の言葉の意味も理解でき
た。
だが、その後の魅羅の行動は、予想もつかない事だった。確かに期待はしていたが、
実際にそうなるとは思っていなかった。
「お姉ちゃん、その本で、男の子の事勉強したつもりよ。
・・・ちゃんと出してあげないと、夜、出ちゃうのね」
後半、魅羅の表情が朱に染まる。
「明は、自分の部屋がないから、自分で出来ないでしょ? ・・・だから、お姉ちゃん
が出してあげる」
「え?」
その意味は判ったが、信じられない明が戸惑っていると、魅羅が明の耳元で甘く囁い
た。
「さあ、立って」
その声に操られたかのように、よろよろと明は立ち上がった。
魅羅は膝を付き、決して慣れているとは言えない手付きで、明のパジャマの下を脱が
す。
一瞬、躊躇い抵抗しようとした明だったが、迫り来る得体の知れない期待感が、倫理
感や道徳観、果ては卑猥感までをも麻痺させていた。
パジャマ足首までを脱がせ、前をはち切れんばかりに膨らませた、白いブリーフに魅
羅は手を掛ける。
彼女自身、その光景に見とれ、胸の動悸を高鳴らせていた。
『・・・こんなになっちゃうの・・・』
半ば白くなりつつある意識の中で、魅羅はそう思いつつ、そのブリーフを下げる。
一旦、ブリーフに下げられ、その制約から解き放たれると、まるでゴムか何かで弾か
れたかのように、明の男は、天井に向けてそそり立った。
『あ・・・』
魅羅は声も出せずに、その若い雄を見つめていた。幼さを残す顔に見合わず、明のそ
れは,獰猛な野獣を連想させるほど、猛々しく若い肉塊だった。
「・・・・」
もはや二人とも声も出さない。おずおずと、魅羅が明自身を右手でそっと握る。
ドクドクと脈打つ感触を手のひらに感じとった魅羅は、それに合わせて、ゆっくりと
ペニスをしごき始める。
「あうっ」
ため息と共に、短く明の吐息が漏れる。それは衝撃と言い換えていいほどの、未知の
快感だった。
自分の手とは全く違う、柔らかな感触と刺激。腰のあたりに細かな針が、ちくちくと
刺激しているような感覚に襲われながら、膝が落ちないように、必死に下半身に集中し
ていた。
さらに視界の下に見える姉の胸の谷間と、透き通るような白い肌の太ももが、視覚の
面からも、明の脳髄を強烈に刺激していた。
時間にして、わずか2、3分ほどだったろう。
「きゃっ!」
魅羅が小さく悲鳴を上げた。
快感に耐え切れず、びくびくと痙攣しながら、明のペニスは熱く濃いスペルマを吐き
出した。
勢い良く噴き出した噴流は、避ける暇もなく、魅羅の顔に飛び散った。
熱く、ねばねばと、ねっとりとした感覚が、顔の右半分と前髪を覆う。それは艶めか
しく、妖しい光景だった。
それが明にとって、初めての異性との接触となった。
それ以後、魅羅と明の秘め事は、週に1、2度の割合で行われてきた。
その過程で互いに慣れて来た事もあって、宿題をすると言う名目を使い、家族に疑わ
れないためのカモフラージュをするまでになっていた。
この日も、いつもの通りに欲求が処理され、明が自分の寝床に戻った頃、魅羅は、一
人ベッドに身を投げ出していた。
その右手は、身につけたショーツの下に潜り込み、彼女の敏感な突起を中指で弄んで
いた。
「ん、あ、むん。・・・んんんっ」
声を押し殺しながら、淫媚な快感を貪る。
ここ数週間、明との事の後、彼が残した青い匂いの中で、自らを慰める事が習慣にな
っていた魅羅だった。
魅羅に男性経験はあった。だが、それは恋愛感情を伴わないものだった。
彼女の美しい容姿に惹かれる男子生徒は多く、幸か不幸か相手には困らなかった。
男性経験も美しくなるためには必要と考え、一人の口の固い上級生を選び、ベッドを
供にした。だが、それは期待していたものには到底及ばない、稚拙で自分本位な性技だ
った。
それならば、経験豊富な男と。と言うような思考に、魅羅は至らなかった。
あまりにも年上の男性と寝ると言う想像は、彼女にとって鳥肌が立つほど嫌悪感を抱
くものだった。かと言って、5、6歳程度の年長者では、同世代と違うという保証はな
い。だから、彼女は自分に好きな男が出来るまで、恋愛感情を持ったセックスはしない
事にした。好きな男なら、多少の痛みには耐えられる。だが、好きでもない男に、大事
にしてきた身体を、好き勝手にされるのは我慢できなかった。
また別の思考もある。事、純粋な興味本位の性への欲求は、全く違った方向へと成長
していた。
魅羅の相手をした男は、魅羅の思いとは対照的に悦び、それを露にしていた。
ならば、自分より年下の経験のない男と、自らが思うままに交わることが出来れば、
きっと、快楽を味わうことが出来るはずだ。と考えたのだった。
そして、今、その条件にあった男が、魅羅の身近にいる。男として、十分成長しつつ
も、女性との経験は少なく、かつ従順な男。明だ。
明の身体は、もう十分に男として成長しており、1人前と言っても良い。付け加える
なら、明の男は凛々しく逞しいもので、それを握りしめると、ぼうっとしてしまう程だ
った。
だが、いくらなんでも弟とは寝られない、と理性が止める。
確かにそうだ。これは大好きな弟を、欲望のはけ口にする事になる。それは魅羅にと
っては苦痛さえ伴う事態だ。
第一、明には「本当は、こういう事は、好きな女の子とするもの。私は、その時まで
のピンチヒッター」と魅羅自身が言い聞かせているのだ。
だから、明の気配を感じるうちにオナニーに浸る事で、ささやかな満足を得るしかな
いのだ。
『ああ、明・・・、ここよ。・・・お姉ちゃんのここに、あなたのおチンチンが入るの
よ』
だが、想像ではどんなことも自由である。仮に、明が魅羅を求めてきたら、その時、
自分はそれを拒めるだろうか?
いや、むしろ、それを待っているのかも知れない。「お姉ちゃんとしたい」と言って
くれる時を、心待ちにしているのかも知れない。
そんな淫らで不道徳な想像は、激しく快感を加速させた。
「むうぅぅぅぅぅっ!!」
声が出ないように枕を噛み、魅羅は何度目かの絶頂を迎えた。
そんな秘密がさらに数カ月続いた。
その日、明は朝から落ち着きがなかった。もっとも、それは彼だけではなく、家の者
全員がそうだった。
この日は、明の高校受験結果の発表日なのだから、無理もない。
だが、当の明と魅羅には、別の意味で、更に浮き足立たせる要因があった。
前の晩のことだった。
眠れないからと、明が魅羅の部屋を訪ねた。
それが言い訳に過ぎないことは、その物腰から明らかだった。
「出したいの?」
魅羅は聞いたが、そうではないと明は首を振る。
じゃあ、何? と聞いたが、明は言いづらそうにしていた。悩んだあげく、明はやっ
との事で重い口を開いた。
「明日、受かっていたら・・・」
「?」
「ご褒美をくれる?」
「ご褒美? 何かな?」
「あのさ、・・・僕に、・・・女の人を教えて欲しいんだ」
「!?」
魅羅はあからさまに驚いた表情を見せた。だが、その心のうちは、歓喜に似た感情が
急激に沸き起こっていた。
「僕にSEXを教えて。・・・一度でいいから」
軽い眩暈を感じながら、魅羅は明の言葉を頭の中で繰り返していた。
とうとう来てしまった。と思った。心の底で望んでいた事だ。だが、それを許してい
いのかと、理性が警告音を鳴らす。
”何を言っているの! そんな事、駄目よ!”
そう言うべきだと判っていたが、魅羅の口から漏れた言葉は、その正反対のものだ
った。
「判ったわ。合格したら、明の初めての女の人になってあげる。
でも、いいの? お姉ちゃんで?」
「も、もちろんだよ」
明は喜色満面の笑みを浮かべながら答えた。
そんな事があっての翌日である。明を送り出した後も、魅羅は落ち着かなかった。
そして数時間後、明からの合格の電話が入り、家族が喜んでいる中、魅羅は甘酸っぱ
い期待に胸を膨らませていた。
その週の日曜日。明はきらめき中央公園の入り口に立っていた。約束のデートをする
ために、魅羅からこの時間に、ここで待ち合わせをする。と言われたのだ。
当の魅羅は、明の後に家を出るから、時間をつぶしておくようにも言われた。
明には理由が判らなかった。なぜ、わざわざ別々に家を出なくてはいけないのか?
その理由はすぐに判明した。待ち合わせに現れた魅羅は、家とは全く違っていた。
白いツーピースを見事に着こなし、うっすらとメークしたその顔は、見慣れた「姉」
とは全く印象が違う、美しい「女性」だった。
「さあ、行きましょう」
魅羅が言った。明は半ば呆然としながら頷いた。
明にとって魅羅との「デート」は、まるで雲の上を歩いている様な、ふわふわとした
物だった。
なにしろ弟の立場から見ても、魅羅は綺麗だった。街ですれ違う男たちが何度も振り
向く様は爽快な気分だった。その女性の横に自分がいるという事が、たまらなかった。
街並みを歩き、ウィンドウショッピングや、レストランでの食事をした後、日も暮れ
た公園のベンチに腰を下ろした。
「楽しかった?」
「うん」
魅羅の問いかけに、明が笑みで答える。
「こういうのは、女の人にとって、とっても大切なの。手を抜いちゃ駄目よ」
「?」
その意味が、理解できなかった明に構わず、魅羅は続ける。
「精神的にリラックスしないと、上手くいきにくいの。じゃあ、どうするかと言うの
は、明が自分で勉強してね」
と言いつつ、明の手を取る。
「教えられるのはここからよ」
それは恋人に囁くような、甘い声だった。
その声に敏感に反応した心臓が身体中を熱くさせ、明の思考能力を奪う。
「!」
直後に口に感じたのは、魅羅の柔らかい唇だった。唇で唇を撫でるように魅羅がする
のを、明は身を固くしながら受け入れるだけだった。
「駄目よ、固くしちゃ。もっと唇は柔らかくするの」
一旦唇を離し、魅羅が優しい声で言い、再び唇を重ねる。明がそれに意識を集中して
いると、今度は暖かな舌が明の口に分け入ってきた。
ねっとりした感触が、明の感覚を麻痺させ、自分からも必死に舌を絡ませ始める。
再び、唇が離れると、明は大きなため息をついた。魅羅に両腕を回し抱き締めようと
するのを、彼女がさりげなく避ける。
優しい笑みはそのままに、魅羅が囁く。
「こういう所では、ここまで。
後は、二人っきりになれる所で、ね」
魅羅が選んだのは、市街にある、センスがいいラブホテルだった。
実はそんなに選択肢があった訳ではなく、知っている所はここしかなかった。と言う
のが現実である。だが、当然、明には知る由もない。
キョロキョロと落ち着きがない明をリードする形で、魅羅が部屋を選び、入室した。
「シャワーを浴びてくるわ。ちょっと待っててね。
お姉ちゃんが出たら、明よ」
「う、うん」
明には、肯定の返事しか用意されていないようだった。
浴室に入り、魅羅は念入りに身体を洗った。
この身体を弟に提供する。そう思うと背徳心が、かえってヴァギナをぞくぞくさせ
た。
「もうすぐ、もうすぐよ」
独り言がこぼれた。
備え付けのバスローブをまとい、ベッドルームに出ると、明は、ベッドにおとなしく
座っていた。魅羅の下着ぐらいは見に来るかと思っていたが、その気配すらなかった。
『前の事、気にしてるのね』
そんなことを思いながら、表情に出さないまま微笑み、明の横に座る。
「シャワーを浴びてきて。待っているから」
魅羅の言葉に、ぎくしゃくと明は浴室へと向かう。
それを見届けてから、バッグの中からコンドームを取り出した。深夜、自動販売機で
手に入れたものだ。
そんなに回数をこなすとは思えないが、つけるのに失敗したりした時の事を考え、数
には余裕を持ったほうが良いと言う、本の1カ所を覚えていたのだ。
それを枕元に置く。
それから、バスローブを少し開け、ショーツの位置を直した。この日のために新調し
た純白のショーツだ。デザインは少しおとなし目で、肌の露出はそれほど多くない。
ブラジャーは手間を考えて付けていない。豊満な胸はバスローブから溢れ出しそうだ
った。
魅羅が思っていたより早く、明がシャワーを終える音がしてきた。
慌てて部屋の灯りを消し、ベッドに潜り込む。心臓の鳴る音が耳元で聞こえたが、表
情だけは冷静でいようと、自分に言い聞かせた。
薄明かりの中、ベッドルームの入り口で、バスタオルを巻いた明の姿が浮かんだ。
魅羅は、できるだけ妖艶な声を出すように意識して、明を呼んだ。
「いらっしゃい、明」
意を決した明が、魅羅の横に仰向けになって入り込む。それを見て、魅羅が上から明
と唇を重ねる。
互いに両手を相手の身体に回し、力を込めて抱き締めあう。
圧迫感に音を上げたのは、明だった。甘い快感に呼吸が早まり、鼻での呼吸だけでは
間に合わなくなっていたのだ。
「お姉ちゃん、息苦しい」
「フフッ、お姉ちゃん、重い?」
「そ、そうじゃないよ」
むきになって否定する明が、魅羅には妙に可笑しい。
「いいわ、そういう事にしといてあげる。今度は明が上になって、お姉ちゃんにしてち
ょうだい。好きなようにしていいのよ」
明は頷き、魅羅と身を入れ替え上になる。彼が最初にした事は、邪魔なパスローブを
取り去る事だった。早く、姉ではなく「女」の裸を見たかった。
魅羅もそれを察して、身を浮かして手伝った。
暗さに慣れた明の目に、魅羅の美しい裸体が写った。
暗くてもはっきりと判る白い肌、仰向きになっても、ツンと上を向く張りのある豊か
な胸。綺麗にくびれたウエスト。そして白い下着。
どれをとっても、明にとって初めての興奮状態をもたらす要素に十分だった。
「お姉ちゃん、・・・綺麗」
苦しげな呼吸と共に明が口にした。
「そう? ほんとに?」
「ほんとだよ。すごく綺麗だ」
「ありがとう。嬉しいわ」
それは本心だった。自分に対するその言葉は、今まで何度も聞いてきた。だが、目前
の実の弟から「女」として言われると、その感じ方は全く違っていた。
ジワリと、ショーツに湿り気を感じた。
『やだ、感じてるの? 私?』
それは意外な刺激を魅羅に与えた。
別に自分が感じても良かったんだ。と気づいたのた。
「明、お姉ちゃんを気持ち良くして、それが勉強よ」
と言ったものの、それは、微妙に変化していた自分の照れ隠しでもあった。
明はまず、ぷっくりと膨らんだ、魅羅の右の乳首を口に含んだ。舌先で弾くように、
乳首を口の中で上下させていたが、やがて魅羅の震える声が耳に届く。
「舌でコロコロと転がすようにするの。そうすると、とっても気持ち良いのよ」
言われたように明がすると、魅羅がため息のような声を漏らした。
「ああ、そうよ。優しくね。明、とっても上手よ」
それもまた本心だった。技術はともかく、明が舌で乳首をねぶる度、電流のような快
感が走り、魅羅の後頭部が熱くなっていた。
魅羅はそれを隠そうとして、明に次々と指示を与える。
うなじ、鎖骨、肩、うなじ、様々な部分への愛撫。それに加えて、自分の髪を撫でさ
せたり、「綺麗」「好き」と言うような言葉を明に言わせた。
それらは全て、明に教えると言うより、自分がして欲しいことだった。
明は忠実にそれに応え、魅羅は心が満たされていくのを自覚していた。
『SEXって、気持ちいいのね』
心底、そう思った。
やがて、魅羅は明の手を取り、自らの股間へと誘導する。
そこに触れた明の表情が、一瞬変わるのを、魅羅は見逃さなかった。
「どうなっているのかな?」
「お姉ちゃんのパンツ、湿ってる」
二重になっていてるショーツの薄い生地は、魅羅の沸き出す温水をたっぷりと含んで
いた。
「女の子が、気持ち良くなると濡れてくるの、明も知っているわね。
これがそうなのよ」
「お姉ちゃんも、気持ち良いの?」
「そうよ。明が気持ち良くしてくれたのよ。 ・・・さあ、中に手を入れて良いのよ。
触りたかったんでしょ?」
明は躊躇わなかった。魅羅の言う通りだったからだ。
ゆっくりと上の部分から、ショーツの中に手を入れる。
さらさらとした淫毛が、指に触れる。
「そう、もうちょっと奥。
・・・そう、それよ。それが女の一番感じる所。やさしく、そっと、ああ」
悩ましげな声が室内に響く。明の指は魅羅の突起を、彼女に言われるままに優しく撫
でていた。それが強烈な刺激となって魅羅を襲った。
その妖艶な乱れ方は、それだけで明を切なくさせた。
「お姉ちゃん・・・」
その意味するところを察し、魅羅は明のいきり立った剛肉に、ゴムを被せる。
「途中で中断しても、これはちゃんとつけるのよ」
つけながら、魅羅はそう言った。明も頷いていたが、お互い、その言葉がどこまで通
じているのか不明だった。
魅羅は明に手を添え、自らの泉へと誘った。
「明が気持ち良くしてくれたから、十分濡れているから大丈夫。
そのままおいで」
その通りに明は腰を突き出した。先端にぐにゅっとした感触が伝わり、やがて、それ
が全体を包み込む。
「はあぁん」
魅羅がとろけそうな甘い声で悶える。
「・・・」
明も必死で声を出すのを我慢していた。魅羅の中が、ぬめぬめと明をいたぶり、熱さ
さえ感じる体温は、明の下半身も熱くさせた。
「お姉ちゃん、・・・僕、もう」
「いいのよ、無理しないで」
魅羅には判っていた。明がそれほど我慢できない事を。
その言葉が許可となり、明は声も出さずに果てた。ぴくぴくと痙攣する腰が、それを
魅羅に伝える。
「はあ、はあ、はあ」
明は何か言おうとするのだが、呼吸が乱れ何も言えない。それが治まるのを、魅羅は
黙って待っていた。
やがて落ち着いた明が、魅羅に視線を合わせないまま言った。
「すごい。なんて気持ちいいの? すごい世界なんだ」
「気持ち良かった?」
「うん。・・・でも・・・」
「でも?」
「ごめんなさい。ひとりで、我慢できなくて」
「いいのよ。そんな事は」
明の髪を撫でながら、魅羅が優しくそう言うと、明は、今度は力強く言った。
「お姉ちゃん」
「? なあに?」
「もう一度、もう一度したい」
「!?」
驚いたものの、魅羅に異存はなかった。
だが、明の分身は本人の気持ちに反して、力なく萎えていたのだ。
一瞬躊躇したものの、すぐに明を仰向けにさせる。スルリとコンドームを抜き取り、
テッシュに包んでごみ箱へ入れる。そして、まだ蒼いエキスにまみれた、ペニスを口に
ほおばった。汚いとか言う感覚は全くなかった。
魅羅とて、口での愛撫の方法を熟知している訳ではない。だが、明には、それだけで
十分だった。
『お姉ちゃんが、・・・口でしてくれるなんて』
感動ですらあった。明は見る見るうちに元気を取り戻し、天井に向かってそそり立っ
た。
『すごい・・・』
それは魅羅にとっても、新鮮な感動だった。自分の口の中で、力強くなっていく男の
生殖器。それに触れる事は今までなかったのだから。
魅羅は今度は口と手を使い、明にゴムを被せる。そしてその上にまたがり、いまだ濡
れそぼるクレヴァスに、一気に突き刺した。
「ぐあああぁっ!!」
「ああああ! ああ!」
姉弟は、同時に歓喜の声を上げた。
『私、イク。弟でイッちゃう!! すごい! こんなの初めて!』
それはめくるめく快感だった。
目を閉じると瞼の中に星が飛び交い、我慢しようとしても、喘ぎ声が止められない。
自らの意志とは無関係に、腰が勝手に艶めかしく動き明を弄ぶ。
それによって明が苦悶する表情が、また、たまらない。
2度目とは言え、明もそれではもたない。一度目より多少延びたとは言え、さほどの
時間を経ずに絶頂を迎えようとしていた。
「お、お姉ちゃあん!!」
だが、魅羅もその声で絶頂を迎えた。この異様な関係と快感。魅羅の意識も宙を舞い
始めた。
そして、それは同時に訪れた。
「イ、イックううぅっ!!」
「出る。出ちゃう!!」
申し合わせたように、同時に叫び、2匹の野獣と化した姉弟は、快感の荒波に投げ出
されていった。
それから、1カ月ほどの月日が流れ、春真っ盛りの頃になった。
休日、魅羅はする事もなく、自室でぼうっとしていた。
あの明との日以来、彼女は自分の身体を持て余していた。SEXがあれほどの快楽を
もたらしてくれるとは、衝撃的だった。
だが、それは相手が明だったから。と判っていた。
それでは次の機会はない。確かに一線は越えてしまったが、これ以上、身体を重ねる
事は、さすがに躊躇った。墜ちていくのが怖かった。
しかたなく自分を慰めるのだが、それも代償行為でしかない。街で、そういう年齢の
男に声をかければ、彼女ならかなりの確率で叶うだろうが、そこまでする気にもなれな
い。
結局、何もないまま、悶々とした日々を送っていた。
そんな時、ドアがノックされた。許可を得て顔を見せたのは明だった。
一瞬笑みが浮かんだ魅羅の表情が、疑問のそれに変わる。
明の背後に、もう一人いた。十分見覚えのある顔。
次男の光だった。
「お姉ちゃん」
明がたった一言、それだけ言った。だが、魅羅にはそれで十分だった。
「そう」
妖しい輝きを瞳に宿し、魅羅は微笑んだ。
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