虹野沙希 古式ゆかり編 それは5月になったばかりの火曜日のことだった。 当番制で火曜日、金曜日の片付け当番になった、サッカー部の3年生マネージャー、 虹野沙希は、部室の後片づけをしてから、部室のドアの鍵をかけた。 時刻は8時近くなろうとしていた。いつもの事ながら、着替える時間も惜しいから、 クラブ活動時のトレーニングウェアのまま、帰宅しなければならない。家が近いから出 来る芸当といえば、そうも言えるかも知れない。 鍵を用務員室に預けようと歩き出した時、沙希の耳に物音が届いた。 「?」 サッカー部は、きらめき高校の運動部の中で、一番遅くまで練習するクラブであり、 部室長屋と呼ばれる、プレハブがつながった各部室には、誰もいないはずである。 事実、どの部屋にも明かりは灯っていない。 気のせいかと思った時、再び、聞き慣れない音がした。しかも、それは人の声のよう に聞こえた。 興味でもなく、好奇心でもない。特に何かを考えているわけではなかったが、その音 の原因を、沙希は確かめようと思った。 ガタガタと言う音と、何かぼそぼそと聞こえる声のようなものは、断続的に、途切れ とぎれに聞こえてきた。 やがて、それがプレハブ棟の一番はずれの位置にある、テニス部の部室から聞こえて くるものだと、沙希は突き止めた。 ドアを開けようとしたが、一瞬、何か危険のようなものを感じて、その手を止めた。 その代わりに、窓が取り付けられている建物の裏側に回った。 カーテンは開かれたままになっており、中が見えそうだった。照明がなく、真っ暗な 部屋の中を、そうっとのぞき込んだ。 「!?」 その中に繰り広げられていた光景に、沙希は声にならない驚きの声を上げた。 部屋の中には、テニスウェアを着た一組みの男女がいた。テニス部の部室なのだか ら、それ自体はおかしくない。だが、その二人がしている行為は、明らかに異常なもの だった。 部室中央に置かれた机に、女子部員が両手をつき、足を肩幅の倍ほど拡げて、下半身 を後方に突き出していた。その下半身の背後から、男子部員が覆いかぶさるように、そ の下半身を押しつけ、腰を前後に動かしているのだ。 スカートに隠され、その結合部はうかがい知ることが出来ない。だが、男子部員のシ ョートパンツはその足元に落ちており、男子部員の下半身は剥きだしになっていた。 女子部員の左膝の上には、アンダースコート代わりの紺色のブルマーが、脱がし切れ なかった様子で引っ掛かっていた。 紺色とコントラストとなる白いショーツが、そのブルマーに巻き付いているのが、暗 闇でもはっきりと見える。 二人がセックスをしているのは明白だった。 (な、なに? なんで、こんなところで?) 沙希の疑問はもっともだ。誰がこんな事を想像できよう。 だが、沙希の疑問は、少し方向がずれていった。 (誰なんだろう? 暗くてよく見えないな) 確かに顔はよく見えない。だが、女子部員の左右に分けた三つ編みに、沙希には見覚 えがあった。 (ま、まさか?) 信じられない沙希の耳に、決定的な男子部員の声が届いた。 「古式せんぱぁいっ!!」 (こ、古式さんなの!?) 古式ゆかり。テニス部の3年生であり、古式不動産のお嬢様として、校内でも知る人 ぞ知る存在である。 だが、そんな純粋培養の見本のようなゆかりにも、隠し持った一面があった。 きっかけは1年生の時、上級生の男子生徒にコーチを受けた事だった。たくましい男 の身体に、心の奥がどきどきするのを自覚した。 それまで女子同士でしかテニスをした事がなく、同世代の男に触れた経験は、その 後、彼女の嗜好に大いに関わる事となる。 2度目のきっかけは、2年生の春。1年生の男子部員とペアを組んだ事が、決定的と なる。 ペアの相手の1年生、名前は水島昂志。やや線の細い、なかなかの美少年だった。 昂志がゆかりに、単なるあこがれ以上の感情を抱いている事は、薄々とゆかりにも判 っていた。だが、下級生と言う事もあり、どこかで心の隙を見せていた。 間違いが起きたのは、夏の合宿の夜の事だった。照明の中での夜間練習が終わった 後、コート脇のベンチで、練習の内容のついて話し合うため、昂志と二人きりになっ た。 人通りがない事のみを意識したゆかりは、迂闊にも、ベンチに腰掛けている昂志の 背後で、汗を吸って気持ち悪くなったショーツとアンダースコートを着替え始めてし まったのだ。 ゆかりにしてみれば、スカートを穿いているからと言う気持ちがあったのだが、迂闊 と言えばあまりにも迂闊だった。 そんな異様な状況で、昂志の高ぶった感情が理性のたがを外すのを、一方的に責める には酷がある。 昂志はゆかりに襲いかかった。草むらに押し倒し、強引にゆかりの唇を奪う。 「やめてください!!」 ゆかりは即座に拒絶した。その言葉に、昂志は、はっと我に返る。 半狂乱になって謝罪する昂志に、ゆかりが投げ掛けた言葉は、自分でも驚くべき事だ った。 「こう言う事は、ちゃんと、二人きりに、なった時に、しましょうね」 とは言え、門限もしつけも厳しいゆかりにとって、テニスのペアとは言え、一人の男 と二人きりになれる機会は、そう、あるはずもなかった。 だが、3年生が引退した秋の終わり。週に2回、部室の片付け当番をゆかりが引き受 けた時から、状況は変わった。 少なくとも、最後まで練習をしているサッカー部が終わるまで、最大限、9時ごろま でなら、テニス部の部室で二人きりになれる事となったのだ。 それは上手くすれば、誰にも不審を抱かれない。絶妙の空白の時間であった。 2月、冬の寒い日に、制服を着たまま、初めて昂志のペニスを受け入れた。いけない 事をしていると、十分過ぎるほど判っていたが、それが逆に異様な興奮をゆかりにもた らした。 さすがに避妊の知識は持っていたから、ゆかりと昂志の秘め事は、誰に知られる事 も、大事になるでもなく続けられていたのだった。 状況が多少変わったのは、ゆかりが3年生になった春、彼女の当番が「月、木」から 「火、金」に変わったことだったが、それはさしたる障害になるとは思えなかった。 この日、沙希に目撃されるまでは・・・。 「はっ、はっ、はっ、はっ」 声と息の中間にあたる音を、ゆかりの声帯は絶えず生み出していた。 「ゆかり先輩、好きです。大好きです」 昂志がゆかりの耳の後ろで、甘えるようにささやく。いくら校内に人がまばらと言っ ても、大きな声を上げる愚は犯したくない。 それが二人の暗黙の了解だった。 「わたしも、・・・好きですよ」 優しく微笑みながら、昂志に顔を向けるため、肩ごしに振り向いた。 その時だった。移動する視界の中で、窓の外に一つの人影を認めたのだった。 だが、ゆかりは全く動ぜず、昂志のグラインドに合わせ、艶めかしく腰を振り続ける のだった。 慌てたのは、むしろ窓の外にいた人物、沙希のほうだった。 (見られた!?) 主従が逆転した思いを抱き、沙希はとっさにしゃがみ込んだ。 なぜ自分が隠れなければならないのか? とも思ったが、再びのぞき込むわけにもい かない。 沙希は中腰のまま、逃げるようにその場を後にした。 その次の金曜日、沙希は朝から落ち着かなかった。 (古式さん、まさか、今日も?) テニス部の当番制が、サッカー部と同じシフトになっていることは、前々から知って いた。だとしたら・・・。 そんな不安が、一日中彼女を悩ませた。確かにあの時、暗闇の中で、ゆかりの瞳がき らりと光り、視線がかち合ったと沙希は思っていた。 だが、この日の昼休み、ゆかりは沙希とすれ違っても、変わった様子は全く見受けら れなかった。 沙希は、あれは夢ではなかったのか? とさえ思ったが、そうでないことは彼女が一 番よく知っていた。 だから、なおさら不安は募る。そして、その不安は的中した。 その日、二人は制服のまま、淫らな行為に耽っていた。 ゆかりが机の上に乗り、制服のスカートをはしたなくまくり上げていた。 膝で曲げた両足を大きく拡げ、白く可愛いいお尻を、机から外側にはみ出させてい る。 昂志はゆかりの両足首を両肩に載せ、自らの下半身をゆかりの股間に押しつけ、火曜 日とはまた違う、円を描く動きで腰を動かしていた。 なぜ、せめてカーテンを閉めないのか? 沙希には理解できなかった。 先日より、やや、明るさを増した月の光が、甘美に咽ぶゆかりの表情を妖しく浮かび 上がらせていた。 (そんなに気持ちいいの? こんなところでするセックスが、そんなにいいの?) 沙希の下半身が、かっと熱を持つ。自分でも信じられない事だが、現実で、他人のセ ックスを見るという生々しい体験に、沙希の女の部分が勝手に反応してしまったのだ。 だが、沙希はそれを抑えようとはしない。悶えるような表情で、トレーニングパンツ のウエスト部分から右手を差し込み、ブルマーの上から秘部をさすった。 「ぁぅ」 ささやかに声を漏らす。 ブルマーの下には、さらにコットン地のショーツを穿いている。そのショーツ、さら にブルマーのニット生地を経てもなお、熱くなった股間の息吹が伝わってくる。 校庭のはずれのここに、他に誰もいるはずがないという確信があった。裸になってい るわけではないのだから、万が一の事があったとしても、なんとでも言い訳はできる。 そんなぎりぎりの安心感が沙希にはあり、彼女は思いのまま、手淫を味わった。 ガラス越しとは言え、沙希のほんの目の前には、正に迎えようとしている絶頂に向 け、けだもののような動きへと移行していく、ゆかり達の姿があった。 それに合わせるように、沙希の手の動きも激しくなる。 (ああ、いい。最近、オナニーもしていなかったから、すごく気持ち良い!) 沙希が絶頂に達する寸前、昂志も小刻みな痙攣をしながら果てたようだった。 (イ、イっくぅうぅ!) それを見てとった沙希もまた、淫媚な快感に身を振るわせていた。 その時、ゆかりが浮かべた、意味深げな笑顔を知る者は一人もいなかった。 正直に言えば、ここ数日の間、ゆかりも心配と不安に無関係でいられたわけではな い。自分達の行為を見られた以上、目撃者が報告をすれば、なんらかの処罰を受ける可 能性は否定できないのだから。 だが、彼女は落ち着いていた。現場を抑えられたのならともかく、そうでないのな ら、言い方は悪いが、しらを切る自信があった。しかも、その後、何のリアクションも ない。それはどういうことか? ゆかりが記憶していた目撃者のシルエットや、いろいろな条件を組み合わせていく と、それが誰であり、どういう事なのか? おおむね特定できた。 今回、ゆかりは敢えて、危険を伴う賭けに出た。そして、それによって勝算を得られ た事は、彼女にとって満足のいく結果となった。 ゆかりは一人ほくそ笑むと、笑顔を表情に残したまま、ぽつりと言った。 「これを、災い転じて、福となす、と言うのでしょうねぇ」 土曜日の練習が終わった後、ゆかりは昂志にそっとたずねた。 「昂志くん、一つ、お尋ねしたい事が、あるのですが?」 「え? なんですか?」 「ええと、男の方は、その、付き合っている女性がいても、他の女性と、出来るのでし ょうか?」 俊哉の狼狽は可愛いものだった。慌てふためきながら、ゆかりにささやかに抗議をし た。 「ぼ、僕が好きなのは、古式先輩だけです!! そんな事、言わないで下さい!!」 ゆかりは笑って首を振る。 「いいんですよ。昂志くんが、そう思って下さる事は、判っております。 ですが、私一人より、その方が、昂志さんが喜ぶと思ったのです」 「先輩ぃ」 心底困ったような表情を浮かべる昂志に、ゆかりは別の側面を切り出した。 「でも、昂志くんが、そうしてくれないと、これから先、困る事に、なるかも知れない のです」 「え?」 ゆかりと昂志の会話から、週が明けての火曜日。それまで不安だった沙希の心理は、 この日、期待感に変わっていた。期待と言ってしまう事に語弊があるとすれば、もやも やとした興奮状態と言うべきか? だからと言って、待ち望んでいたわけでもない。何ともやり切れない気持ちのまま、 沙希は一日を過ごした。 ともかく、いつものように授業を受け、部活ではマネージャーとしての仕事をこなし て、問題の時間帯に突入した。 異変は、沙希がサッカー部の部室の鍵を締めた時に起きた。 「こんばんわ」 背後からかかった声に、沙希はぎくりとして振り向いた。 そこにはにっこりと微笑む、制服姿のゆかりが立っていた。 「ちょっと、よろしいですか?」 それ以上、ゆかりは何も言わなかったが、二人の間にある雰囲気の前に、沙希は何も 言わずうなずいた。 二人が来たのはテニス部の部室だった。ゆかりは、沙希に椅子を勧めて、静かに、後 ろ手にドアの内鍵をかける。明かりはついていない。 「あの、古式さん」 切り出したのは沙希だった。 「わ、私、誰にも何も言うつもりはないから、心配しなくていいわよ。そ、そりゃ、驚 いたけれど、こういうのは、人、人それぞれだから」 一種変わった緊張感で、沙希はいつになく饒舌になる。 そんな沙希の言葉にも、ゆかりの表情は変わらない。あい変わらぬ笑顔のまま、沙希 の顔を見つめていた。 (?) 不審と不安、双方の表情を浮かべる沙希の背中に、ゆっくりと歩み寄る。 両肩にそっと手を載せ、沙希の右の耳もとでそっと囁く。 「それは、判っています。虹野さんが、そんな事を、するはずがないって。 だって・・・」 そう言いながら、ゆかりは右手を、沙希の右の太ももの付け根に下ろしていく。 「だって、私達の事を覗きながら、ご自分を、慰めていらしたでしょ?」 沙希は耳たぶまで、火が付いたかのように、真っ赤に染めた。 「ご、ごめんなさい」 そんな必要などないのに、沙希は謝った。 「謝ることなど、ありませんよ。虹野さん、寂しかったのでしょうから」 一瞬のためらいの後、沙希はコクリと頷いた。 「だって、哲哉くん、最近、忙しそうで、なかなか会えないんだもん」 沙希が哲哉と名を上げたのは、この年の春、きらめき高校を卒業したサッカー部OB の、東雲哲哉の事である。 そして、在校時には、学校公認の沙希の恋人、であった。 しかし、その素質を見込まれJリーグに進んだ哲哉には、沙希と会える時間が極端に 少なくなってしまった。 電話や手紙でのやりとりで、精神的な寂しさは埋め様もできたが、すでに結ばれ、そ の世界を知ってしまった肉体的な寂しさは、知らず知らずのうちに、彼女にストレスを 与えていたのだった。 ゆかりには、その事が、簡単に想像が出来たのだ。 「それで、私、とっても良いことを、考えついたのですよ」 そう言ったゆかりの声には、どことなく甘い要素が含まれていた。 「?」 その真意をつかめないでいる沙希を残して、ゆかりは部室の隅に行き、ロッカーの間 に掛けられていたシーツをとった。 「!?」 そこには制服姿の昂志が、申し訳なさそうに立っていた。 ゆかりは再び沙希に歩み寄り、耳に囁く。 「彼と、寝てください。きっと、お愉しみいただけると、思いますよ」 ゆかりの言葉は見えない鈍器となり、沙希の後頭部を殴りつけた。 「あ、あな、たた。古式さん、あなた! 何を言っているか、判っているの!?」 厳しく口調で責める沙希にも、ゆかりは全く動じない。 「もちろん、よーく、判っておりますよ」 「だって、彼はあなたの恋人でしょ!!」 「はい、そうです。ですが、今、私、月のものでして、昂志くんのお相手が出来ないも のですから」 ゆかりの言葉は、めったに怒りの感情を表に出さない沙希をも、激昂させた。 「ば、馬鹿にしないで!! 私はあなたのスペアだって言うの!?」 さしものゆかりも、これにはさすがに狼狽した。 「そうではないのです。私は、虹野さんのお力になりたいのです。身体が疼く寂しさ は、私も承知しているつもりです。虹野さんは、そうではないのですか?」 確かにゆかりの言う通りだった。人の性行為を覗き見て、自慰にふけるなど、そう言 われるのも無理からぬ事であるし、なにより、沙希自身が、ここ数日、そう思えて仕方 がなかったのだ。 「あ、そ、それはそうだけど・・・。でも、私、哲哉くんの事、裏切れない。 やっぱり、こういうのは、いけない事よ」 急に怒りが冷めても、沙希には同意は出来ない。ゆかりが、目で昂志に合図をしてか ら、沙希をそっと抱きしめる。 「これは、セックスでは、ないのです。ただの自慰です。 虹野さんは、快感を得るだけで、恋愛感情は、持たなくていいのです。裏切ることに はなりません」 「で、でも。古式さんはいいの? 彼が、他の娘としちゃって、平気なの?」 「私は平気です。昂志くんが喜んでくれるなら、その方が嬉しいのです。虹野さんのよ うに素敵な方なら、私は賛成です。 私のお父様を、見ていると判るのですが、男の方は、そういう感じ方が、できるので すから」 ゆかりの息が、声と共に、見えない愛撫をするかのように沙希の耳に触れる。 沙希は、だんだん頭がぼーっとなり、ゆかりの言うことに、反論が出来なくなってい った。 「そうなのかな? そういうものなのかな?」 「そういうものなのです」 ゆかりがそう言ったその時、沙希の視界に別の人物が表れた。それは昂志だった。 昂志はわずかではあるが強引に、沙希の唇を奪う。 「う、んんん」 (あ、いや、・・・キスが、こんなに気持ち良いなんて・・・) 指では絶対に味わえない、甘美な感触と味わいに、沙希の思考が白く染まっていく。 流されていると、自分を認識できていたが、それに逆らう気力が全く消えていった。 だが、あえて一つ、ささやかな抵抗を試みた。唇を離した昂志の目を見つめ、すがる ようにこう言った。 「お願い、あなたの事、哲哉くんだと思わせて。わ、私・・・」 その言葉を最後まで続けさせることなく答えたのは、それまで黙っていた昂志だっ た。 「ええ、それでも構いません」 昂志は、最初こそは、ゆかりに抵抗を示したものの、結局は説得を受け、この話に乗 った ゆかり以外の女子とのセックス。それは昂志の本能に、甘く、それでいて淫媚な 誘惑をしていた。理性では押さえ切れない興奮が、昂志には渦巻いていた。 しかも、その相手が「運動部のアイドル」として知られる、沙希だと言うことが、そ れを更に加速させていた。 昂志の答えに覚悟を決めた沙希が、昂志の首に両手を回し、再びのキスを求める。昂 志がそれに応え濃厚なディープキスを二人は交わしはじめる。 昂志の男の荒々しさを感じさせる、ざらざらした舌の感触に、沙希の首のあたりの脊 髄がじりじりとしびれる。 「あはぁ〜〜ぅ」 唇が離れると、沙希は艶めかしく吐息を漏らした。もう、倫理や道徳などと言うこと は、何も考えられなくなった。 今、ここにある快楽を思う存分に愉しみたい。それだけを考えていた。 首筋にキスを移しながら、昂志は沙希の胸を揉む。その手慣れた愛撫に、沙希の秘部 が更なる快感を求め、切なさを訴える。 その間、ゆかりはシーツを床にひいてから、昂志の制服ズボンを下ろす。 ブルーのビキニブリーフの股間に、窮屈そうな熱い膨らみがあり、ゆかりはそれを開 放させる。 そこに潜んでいた昂志の欲望が、開放された空間にそそり立ち、沙希の下腹部に触れ る。 ゆかりはまるで昂志のアシスト役だった。沙希を左手で支え、右手で胸を愛撫してい るため昂志の両手が塞がれていると見るや、すかさず、沙希のトレーニングパンツを、 するすると降ろしにかかる。 「ん、ん、ん」 同性に衣服を脱がされると言う感覚に、沙希は一瞬抵抗を見せたが、足首のところま で降ろされると、自らの意志で、右足、左足の順番で足を上げ、ゆかりに協力をする形 になった。 トレーニングパンツの下には、学校指定のブルマーがあり、現在の沙希の姿は、体育 の授業を受ける体操服姿そのものだった。 昂志は沙希を抱いたまま、ゆっくりと床に敷かれてあるシーツの倒れる。沙希を上に して、空いた左手で、沙希のブルマーを脱がしにかかる。それを当然のようにゆかりが 手伝う。最後に残った、純白のコットン地のショーツの上から、昂志が右手が股間に触 れる。 「やん、あはん」 昂志の指は、まだ幼さを残しながらも、ごつごつとした男らしさも兼ね備えていた。 自分の指とは違うその感覚に、沙希は悶える。 理性の糸が完全に切れたように、沙希は昂志のペニスを触り返す。 「!」 沙希は驚いた。そこにはすでに別の人物の手があった。 「どうです? 久々の男の方は?」 沙希が視線を上げると、まるで沙希の心を見透かしたような表情のゆかりがいた。沙 希は2度ほどこくりと頷いた後、昂志を柔らかく握り締め、しごきはじめる。 それを見て、ゆかりは昂志の制服のボタンを外し、その下のTシャツを上に捲る。 昂志の胸が露出すると、その左胸を右手で触れ、唇と唇を合わせる。 「ああ」 ゆかりと沙希。いずれ劣らぬ美少女二人に愛撫され、昂志は切ないような声を上げ る。ペニスはますます鋼のような硬度を見せ、猛々しくそそり立つ。 ゆかりは唇を離し、昂志に聞いた。 「昂志さん、いかがですか? こう言うのも素敵でしょ?」 「は、はい、先輩。すごいです」 その返事に満足したように頷いてから、今度は沙希に聞く。 「虹野さんは、どうですか?」 「うん。いいの。すごく、いいの」 激減した語彙の中から、ようやくの事でそれだけ言うと、沙希はゆかりと争うように して、昂志と唇を重ねる。 「ん、んぐ、むぅん」 悩ましげな声が、静かに低く部室内に響きわたる。ゆかりは瞳をとろんとうるませな がら、制服のスカートのポケットから、用意してあったコンドームを取り出し、手際よ くそれをつける。 それを感じとった沙希は、自ら腰をくねらせながらショーツを脱いだ。 そこから現れた青みがかった茂みは、沙希の秘部からが溢れでた果汁に濡れ、白い肌 に張りついていた。 「わたくしも、我慢できませんわ」 そう言って、ゆかりは制服を脱ぎはじめ、とうとう生理用のショーツと靴下だけにな ってしまった。 「古式先輩、きれいだ」 昂志はたまらず、ゆかりの胸にキスをする。ころころと乳首を転がすようにすると、 ゆかりも顔を上気させ、震える声を上げる。 「はああ、あぅん」 その光景は、沙希の神経をしびれさせ、まるで夢遊病者のように上半身を起こし、自 らの股間に、昂志の硬直をあてがう。 「あう!!」 ぐさりとした感覚が、沙希の中心を貫く。 「ああっ! いいぃっ!!」 重力の力を借り、自らの腰を落としていくにしたがって、その中心部に昂志の男根が 無遠慮にめり込み、粘膜の壁面を蹂躙していく。 沙希の意志に反して、顎が、肩が、腰がわなわなと震え、心の奥底で待ち望んでいた 快楽に、悦びを露にした。 「あぁ、熱い、焼けそう・・・」 そう言った沙希は、左手を昂志の下腹あたりに載せると、自ら腰を使い始めた。円を 描くように艶めかしく、それでいて躍動感のある腰使いは、昂志の男根に、えも言われ ぬ快感をもたらす。 さらに、指よりも柔らかく、沙希の女性器が、まるでそれ自体が別の生き物のよう に、昂志をくいくいと締め付ける。 「あう! おわ!」 たまらず昂志が悲鳴に近い声を上げる。ゆかりの中も良かったが、沙希の中もまた格 別だった。 懇願するような表情で、昂志はゆかりに聞いた。 「先輩、もうだめです。もう、・・・もたない」 だが、ゆかりから許可は出ない。 「駄目ですよ。それでは、虹野さんが、可愛そうではありませんか。 もう少し、頑張りましょう」 ところが、意外な人物、沙希が言った。 「いいの! 行って!! 私も、もうイくから、イっていいの!!」 異常な興奮状態のため、沙希の絶頂への高まりは早く、息づかいは荒くその瞳の焦点 は完全にあっていなかった。 「もう、よろしいのですか?」 「いいの、いいの。お願い、・・・意地悪しないでぇ」 確かめるように聞いたゆかりの声も、沙希はまったく違った意図に捉えた。 ゆかりは満足そうな表情で、昂志の耳に囁いた。 「と言うことです。気をやって、よろしいですよ」 「はぁ、はい」 許しをえた昂志は、堰を切ったように腰を激しく上下させた。 「が、ああああん!! むぅぅっぅぅっぅんんんっ!!」 沙希は唇を噛み、必死に声を抑えつつも、短い蒼い髪を振り乱し、涙をこぼしながら よがり狂った。 (すごい! こんなに気持ちいいなんて・・・。私、変になっちゃう!!) 狂暴とも言える快感に、身体中の感覚が麻痺したように思える。そのくせ、沙希の女 の部分は、敏感に性の感覚を味わい、まるで失禁したかのように、熱い果汁で昂志の下 半身を濡らしていった。 「古式先輩ぃ!」 昂志もたまらなかった。突き抜けるような快感が、全身を包む。 ゆかりがそんな昂志の両頬を、愛しそうに両手で包み込む様に触り、そっと唇を重ね る。 それがまるでスイッチになったかのように、昂志の下半身が爆発し、猛烈な噴流とな ってスキンの中にぶちまけられた。 「ああぅっ!!」 腰や腿がびくびくと震え、沙希に振動となって伝わる。 「うぅっ!!」 沙希もそれに反応して、一気に頂点に登りつめてしまった。まるで腰から上を背伸び をするように起立させ、全身を硬直させる。 ぴくぴくと身体のあちこちが痙攣し、沙希が体感した快感の凄さを物語っていた。 全身の硬直が、ふっと取れ、前のほうに倒れ込む沙希を、ゆかりが受け止める。 未だ焦点の定まらない瞳、だらしなく開き唾液を垂れ流す口もと。想像できる沙希の 達したオルガスムスを、我が身に置き換え、身を震わすゆかりだった。 そして、苦しげな荒い呼吸を続ける沙希の、真っ赤に上気した耳元に顔を寄せ、そっ と囁いた。 「また、その気になられましたら、火曜日か金曜日にいらして下さいね。いつでも結構 ですよ」 沙希は声もなく頷くだけだった。 数日後の火曜日。テニス部の部室で、ゆかりは、それまでのように、昴志と制服姿の まま抱き合っていた。 深いキスと力を込めた包容の後、2人のため息と共に、一旦唇を離す。 昴志がゆかりの耳のまわりを、人差し指でなぞりながら、甘えるような声で聞いた。 「あれから、虹野さん、来ませんねえ」 ゆかりが、からかうようでいて、少し拗ねたような口調で答えた。 「あら? 昴志くん、虹野さんが、そんなに、良かったんですか?」 「そんなんじゃ、ありませんよ。なんか、やりすぎちゃったかもって、心配してるんで すよ」 「うふ、大丈夫ですよ」 「どうして、先輩は、そんなに余裕なんですか?」 「ええ、だって・・・」 ゆかりがそう言った時、ドアをノックする音がした。 「あら? いつもより、ずいぶんとお早いお着きですね。 どうぞ、お入りください。鍵は開いていますよ」 ドアの外の相手が判っているかのように、ゆかりがそう言った。 それに応えて、ドアがゆっくりと開いた。 そこにはトレーニングウエアの沙希が立っていた。 顔を伏せながら、沙希が遠慮がちに聞いた。 「私も、・・・入れてくれる?」 ゆかりが、にっこりと笑いながら答える。 「はい、もちろん。大歓迎ですよ」 だが、沙希はすぐに歩み寄っては来ない。 「?」 不思議に思うゆかりと昴志に対し、俯きながら沙希が続ける。 「それと。・・・今度の日曜日。私のお家・・・誰もいないの。 ・・・だから・・・」 それを聞いたゆかりは、笑みをさらに輝かせる。 (お父さまが言ったことは、本当ですね。証人の口を塞ぐには、共犯者にするのが一番 と言うのは・・・) 後書き うへ〜〜ん。ゆかりんが悪役になってしまった。 と言うか、ねえ。 ゆかりんって、天然ボケの策士ってイメージがあるんですよね(なんじゃそりゃ!) とんでもない事を、やたら普通に考えついてしまう。そんな感じでしょうか? 悪い事とか、あんまり深く考えないで、実行しちゃうような・・・。 ウーーン、何を言い訳しとるんだか・・・。まあ、僕自身が思っていた事より、かな り、策士になってしまったようですが、ゆかりんについては、かなり気に入ってます。 沙希ちゃんについては、どうなんかねえ? (オイオイ) かなり途中から、僕の意思を離れて、突っ走ったようですねぇ。そうとう溜まってい たのでしょうか?(やめなさいって言うの) 沙希ちゃんについても、最初のイメージ通りでしたね。 というのは、この話、寝ている夢の中で見たんです。それに修正を加えていって出来 たお話だったのです。 すごいなあ。これも淫夢というんだろうか(爆!)。 なんか、ブルマーがやたら出てきましたが、ブルマファンの方、喜んでいただきまし たか? 僕は嬉しかったです(大爆笑)。