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    片桐彩子、朝日奈夕子編
 
 
 
 放課後の美術室で、片桐彩子はキャンバスに向かい、石膏像の静物画を描いていた。
 彩子はきらめき高校の2年生。文化祭も終わってしまうと3年生はほとんど引退状態
となり、実質上は最上級生となる。
 今日は、美術部の部活動に出たのは、彼女一人だった。たまにではあるが、今までに
も、巡り合わせでこういう事があった。
(集中できるのはいいけど、調子狂うのも確かよね)
 そんなことを思った時、がたがたと音を立て、美術室のドアが開いた。
「ハーイ、あーや。頑張ってるね」
 入りしなそう言ったのは、赤い髪をした女子生徒だった。
「ヒナ? どうしたの? 帰ったと思ったけど?」
 彩子が「ヒナ」と呼んだ女の子。名前は朝日奈夕子と言う。
 夕子はゆっくりと彩子の背中に歩み寄り、右手を彩子の肩口に乗せる。
「へへへ、一度、家に帰ったんだけどぉ、ちょっち、面白いものが手に入ったんで、戻
って来たんよ」
(わざわざ? 制服のままで?)
 彩子は夕子の顔を見上げながら思った。
 確かに、夕子の自宅は学校から近い。だが、それでもなぜ? 面白いもの? と思っ
てしまう。
「で、それがどうしたのよ? ヒナ?」
「明日、学校休みでしょ? また、私ん家に泊まってよ」
 どうも、話が見えない。だが、これが夕子なのだと、彩子はため息をついてから答え
た。
「はいはい、判ったわよ。今晩、行くから、待ってて」
「よーし、約束だぞ!」
 ウインクしてそう言った夕子は、やがて、キョロキョロとあたりを見回す。
「今日は一人なの?」
「うん、私だけよ」
「そう」
 と言うが早いか、夕子は彩子の唇にキスをした。
「もう、学校じゃ、やばいって言ってるでしょ!」
 慌てて彩子がそう言うと、夕子は片手を上げながら出口に向かって行った。
「メンゴ、メンゴ。それじゃ、待ってるよぉん」
 ぴしゃんとドアが閉じ、夕子の足音が去って行くのを、彩子は聞いていた。
「たくもう。私はキスはじっくりしたいんだぞ」
 彩子はそう言ってから、キャンバスを片付け始めた。
 
 
(きゃははは! ぎりぎりセーフだったよぉ)
 夕子はそんなことを思いながら、校門に向かっていた。
(ちょっち高い買い物だったけど、あーやと半々にすれば、負担も減るもんね。
 あとは、またパンツ売りに行って帳じり合わせだぁ)
 夕子の表情は、やや子悪魔的なものになっていた。
(元は取らせていただきますよぉ)
 
 
 一旦自宅に帰ってから、着替えや宿題などを持って、家族に夕子の家に泊まると告げ
てから、彩子は夕子の家を訪ねた。
 夕子の家はマンションで、父親が単身赴任で遠くに転勤し、母親がついて行ってしま
ったので、実質、夕子の一人住まいである。
 彩子を出迎えた夕子は、真っ赤なショーツ1枚の姿であった。
「な、なんて格好してんのよ!?」
「いいじゃん。どうせすぐに脱いじゃうんだもん」
「た、確かにそうだけど、・・・あのねえ」
 額に手をあて、あきれる彩子に構わず、夕子は彩子に抱きついた。
「いいじゃん、そんなことは。それより、あーやぁ、キスしよ」
「今度はじっくりだぞ」
「判ってるって」
 夕子のウインクが合図になって、二人はキスを交わした。お互いに相手の口に送り込
んだ舌が絡み合い、夕子の乳首がピクンと立つ。
「こら、まだ早いぞ。私はお風呂にも入っていないんだぞ」
 夕子の乳首を、指でピンと弾いて彩子が言った。
「わぁったよ。入ってきて」
「ジャストモーメン。ちょっと待っててよ」
 彩子はウインクを返して、浴室に向かった。
 
 
 彩子と夕子は、クラスも違えば部活も違う。だが、中学の頃からどうも息が合い、高
校になってもそれは続いていた。
 中学の修学旅行の時、二人の関係に異変が起こった。当時、一緒のクラスだった二人
は、宿泊先で同室となった。
 当然、夜寝ることなどせず、色々、おしゃべりするをする事となる。
 学校の事、家の事、恋愛の事、そして性の話。夜も深まる中、好奇心が強い二人は、
あたりを包む雰囲気を、何となく察した。
「ねえ、彩子ちゃん」
「ん?」
「キスしよっか?」
「うん」
 それはただ単に興味からくるものだった。二人は恐る恐ると言った感じで唇を合わせ
た。お互いの柔らかい粘膜が、お互いの脳髄に、柔らかく、そして悩ましげな刺激を送
り、動悸が早まる。
「気持ちいいね。彩子ちゃんの口」
「夕子ちゃんも、柔らかくっていい気持ち」
 初めて体験する性への入り口に、二人は胸をときめかせた。
  それから先、好奇心からくる性への二人の冒険は、当然のように進んでいった。
 お互いの胸や身体に触る段階には、すぐに達した。さすがに女性器を触るまでには、
多少の時間を要したが、一旦、触れてしまえば、その性戯はそのバリエーションを増し
た。
 指は当然として、深夜の自動販売機で買ったコンドームに棒状のものを入れ、お互い
に挿入し合うまでになっていた。 女性同士であるため、決して無理はせず、痛い思い
もしないで済んだ。
 お互いの家に泊まりあっても、同性であるが故、誰に咎められる事もない。さらに、
嘘をつく、アリバイを作らなければならないような、後ろめたさもないため、二人の間
の性の開拓は、人目に触れることもなく進んでいった。
 無論、この行為が倫理に反する行為だという事を、二人とも判っていた事も大きな要
因だった。
 だが、その性への欲求には、恋愛感情は一切なかった。もちろん友情と言う範疇での
「好き」と言う感情はあったが、男性を愛せないと言う事ではなかった。
 事実、夕子は中学3年の時にバージンを失って以来、4人の男とのセックスを経験し
ていたし、彩子も、高校1年の時にセックスはしなかったと言え、他校の生徒と付き合
っていた。
 二人の性交渉は、本当に好奇心と快楽のみの上に成り立っているものだった。
 これがいつまでも続く関係ではない事は、二人もよく知っていた。だが、それを問い
正したとしたら、二人はきっとこう言うだろう。
「だって、気持ち良いんだもん。しょうがないじゃん。誰に迷惑を掛けているわけじゃ
ないんだし」
 
 
 
「サンキュー。お風呂、ありがとね」
 彩子が浴室から出てそう言った。
「ああ! あーや、ずるい。私だけ下着姿じゃないか!」
 夕子の言う通り、リビングに現われた彩子はTシャツにショートパンツという格好だ
った。
「あのねえ、普通こうじゃないの? お腹、冷やすぞ」
「だってぇ。買ったんでしょ? 新しいランジェリー。
 見せてよぉ。穿いてるんでしょ?」
 やれやれといった表情で首を振り、彩子はショートパンツを脱ぐ。
「おおっ! これは、これは」
「へへへ、どう?」
 夕子に見せ付けるように、彩子は少し腰を突き出す。
 彩子のショーツはシルクの生地で、レースをふんだんにあしらった紫色のものだっ
た。
「高そう」
「まあ、安くはないわね」
「でも、こう言うのより、白の方がブルセラショップは買ってくれやすいんよ」
「何言ってんのよ。ヒナは!?」
 彩子は、ぽかりと、軽く夕子の頭を殴る。さして痛くもないのに、大げさに痛がりな
がら夕子が言った。
「ちょっち、触っていい?」
「なによ? もう始めるの?」
「何言ってんのよぉ。パンツの肌触りを確かめたいだけよ。あーやのエッチ」
「たくぅ」
 口を尖らせる彩子に構わず、夕子の右手が、紫色のシルクに触れる。
「ありゃ、ほんと。これは高いだけはありそう。 いい手触り」
 夕子の指がすうーっと下がり、彩子のデルタ地帯にそっと触れる。
「Ah! あん、やだあ。やっぱりそうなるじゃない。ヒナのエッチ」
「お互い様だね」
 ニヤリと笑う夕子が、なんとなく癪にさわり、彩子は前屈みになって夕子にキスをす
る。
 彩子の舌が、強引に夕子の唇に割り入り、歯茎の裏をねぶる。
「ん、ん、ん」
 瞳を閉じ、眉間にしわを寄せながら、夕子の白い肌が桜色に染まっていく。
 やっとの事で唇が離れると、二人は同時にため息をついた。
 とりわけ、大きなため息をついた夕子は、うっとりと瞳を潤ませながら、彩子にしな
だれた。
「まったく、あーやのキスはたまんないなあ。 頭ん中がぼーっとしてきちゃうよ」
 (それこそお互い様よ)と、彩子は思ったが、口には出さず、夕子が言っていたこと
を確かめる。
「バイザウェイ、ところで、面白い物ってなんなの?」
 彩子の言葉に、夕子の瞳に、それまでとは違う種類の輝きが宿る。
「ああ、そうそう。ちょっち、待ってて」
 それだけ言うと、夕子はばたばたとリビングを後にして、自分の部屋へと向かった。
 さほどの時間を置かずに、後ろ手にした夕子が帰ってきた。
「?」
 彩子は首をかしげた。身体で隠したその手に「何か」があるのは明白だった。
「なんだと思う?」
 楽しげに聞いた夕子にも、彩子は素っ気ない。
「あのねえ。それを見に来たのよ。もったいぶらないで」
 夕子は口を尖らせながらも、ためを作りながら右手を前に出した。
「どうだ!?」
「げっ!!」
 夕子の問いに対する、彩子の答えだった。
 差し出された夕子の右手には、男性器を型どったプラスチック製の張り型があった。
 しかも、付け根に当たる部分に、ラバーの黒いベルトのようなものが取り付けられ、
その反対側に向けて、全く同じように、男性器を模したプラスチック製の部分があっ
た。
「ヒ、ヒナ? これって、やっぱり?」
「そうなんよ。これがあれば、同時にイけるでしょ?」
「呆れた・・・」
 彩子は本当に呆れて、言葉を失ってしまった。
 実のところ、前々から夕子は今日の事をほのめかしていた。女性同士と言うことで、
どうしても、どちらか一方が攻め手になってしまいがちで、不満な部分がないわけでは
なかったのだ。
 それが、解消されるとなれば、確かに彩子にしても朗報ではあるが・・・。
「それ、どこから手に入れたのよ?」
 その点が問題だった。話には聞くが、実際に手に入れるまでには、いくつものハード
ルがあるように思える。
 それに答える夕子は無言で、リビングのマガジンラックから、1冊の雑誌を取り出し
た。
「A−HA−N」
 その雑誌名を読んで,彩子はようやく納得した。それは女性向けの性雑誌で、表紙が
外国人モデルなだけで、見た目にはごく普通の女性雑誌だ。
 だが、内容と言えば、とても口には出して言えないような、生々しい写真と記事ばか
りだと言うことは、読んだ事がある彩子は十分知っていた。
「通信販売か」
 彩子はそう呟く。
 その中の広告には、そう言ったものがあり、夕子はそれを利用したのだ。
「で、今日はそれを使いたいわけね?」
 ようやく彩子の言葉が疑問を呈した。
「うん、うん」
 喜色満面の表情で、夕子は何度も頷いた
 だが、彩子の今一つ浮かない表情に、夕子は首をかしげる。
「・・・こういうの・・・いや?・・・」
「ノーノー、そうじゃないのよ。・・・ただ・・・」
「ただ?」
「ちょっと、怖い? っていうのかな?」
 夕子には彩子のその言葉は意外に思えた。だが、自分が手にしたものを、改めて見直
してみると、なんとなく判るような気もした。
 リアルに男性器を型どったそのシルエットは、白い材質になっているとは言え、十分
に生々しく、くびれた亀頭部分は、一種独特の狂気さえ感じられた。
(あたたた。こりゃぁ、ちょっち失敗したかなあ? あーやは”一応”ヴァージンなん
だよねぇ)
 夕子は少しばかり後悔した。その時、彩子がぽつりと言った。
「バット、でも、これ、やっぱり、気持ちいいのかな?」    
 夕子の耳がピクンと動く。どう考えても、これは一つの突破口になる言葉である。
 が、彼女は焦らない。
「まあ、別に、この実物を持ってる男だって、これがあれば良い。っていうわけでもな
いんよね。立派なもの持ってても、自分だけ気持ち良くなって、こっちにはお構いな
し、なんて言うサイテーの奴もいるしねえ。
 あーやが、してくれるんなら、きっと、すっごく、気持ちいいんだろうなあ。って、
思ったの。
 でも、あーやがいやなら、無理強いはしないよん」
「私も、気持ち良くなれるのかな?」
「そりゃ、私が持ちかけた話なんだから、うんとサービスするつもりだったけど、いや
なら、いいんよ。無理しなくたって」
「入るのかな? そんな大きいの」
 正確に言うと、会話がかみ合っていなかった。が、夕子には喜ばしい事態だった。
 結局、彩子は前向きに考え始めているのだから。
(もう一押しね)
 内心でそう思う夕子だった。これが最後とばかり、彩子を落としにかかる。
「ああ、これでも平均より、小さめのサイズ頼んだんよ。痛くちゃ、元も子もないから
ね」
「・・・・」
 彩子は何も言わなかった。だが、先程までとは違い、その瞳からは、恐れより好奇心
が勝っている事を十分に読み取れた。
「しよ?」
 あくまでも短い夕子の誘いに、彩子は無言のうなずきで答えた。
 
 
 
「あ、あん。うむ、ああ」
「oh,ah.うん、あん」
 二人のくぐもった声と、ピチャピチャと言う淫猥な響きが、夕子のベッドルームを満
たしていた。
 薄明かりの中、二人はすでに一糸まとわぬ姿になり、ベッドの上で立てひざになって
抱き合っていた。
 奪い合うかのように深いキスを交わしながら、身をよじらせると、胸の突起が互いに
相手を刺激しあい、ピリピリと弱い電流となって、二人の全身に広がっていく。
(これよ、これ。これなのよん。あーやの肌って、すべすべしてて、気持ちいいのよね
え。たまんないわ)
(ヒナとのキスって、どうしてこんなに気持ちいいのかな? ヒナが上手いせいなのか
な? それに身体も柔らかくって、ぞくぞくしてくるのよね) 
 互いに、相手の身体の気持ち良さに快感を味わいながら、更なる刺激を求めて愛撫を
加速させていく。
 夕子の右手が、彩子の下半身の茂みに分け入った。そして、ふわふわとした、柔らか
な草むらの奥、湿り気を帯びたデリケートな部分に達する。
 敏感な突起にソフトに触れると、弾けるように彩子が首をのけぞる。
「AHhhhhh!」
 心地良い肌触りと柔らかい愛撫に、たまらず、彩子は後方にベッドに倒れ込む。 
 夕子がその上に覆いかぶさる。
「ふふふふ、気持ちいいんだ?」
 意識して意地悪そうに夕子がそう言った。
 彩子がうっすらと笑いながら応える。
「ばか」
 それは反応を期待しての言葉ではないと知っている夕子が、彩子の胸元に唇をあて、
舌で優しく、柔らかな彩子の肌をなめる。
「んぅ」
 くすぐったさと紙一重の快感が、彩子にため息をもたらす。
(あーやったら、結構きてるじゃない。いいぞぉ)
 内心でほくそ笑みながら、夕子は唇での愛撫を移動させる。
 仰向けになってもなお、豊かな盛り上がりを保つ、彩子の左の胸を夕子のキスが、上
がっていく。  
 そして、桜色の乳首を口に含む。
「やあん」
 たまらず彩子が、甘い声で喘ぐ。
 舌で乳首を転がすようにする度に、彩子が声を上げる。その声が夕子の耳朶に心地好
さを伝え、夕子はそれだけで、ぞくぞくと身体が震える思いがした。
(ホント、いい声)
 夕子にとって、彩子の声はあこがれの対象と言ってもいいほど、好意を抱くものだっ
た。 彩子は”そんなことはないよ」と言うのだが、透明感のあるソプラノが、夕子に
はうらやましかった。
 その声が、自分の愛撫によって産み出されていると言う現実に、本人も気が付かない
無意識のうちに、夕子の瞳が潤み出していた。
「あーや、・・・可愛い」
 小さな震える声で、ようやくそれだけ言うと、夕子はゆっくりと右手を彩子の秘部へ
と伸ばす。
 やや硬めの恥毛を分け入り、その奥へと指を進めると、そこはすでに湧き出る泉と化
した、彩子のクレヴァスがあった。
(もう、こんなになっているのね)
 夕子は更に意味深げな笑みを浮かべた。
 彩子にしても、自らの股間が淫液で濡れそぼり、それがおそらく、ベッドに染みをつ
けてさえいるだろうと判っていたが、電流が流れるような快感にあがらう術もなく、夕
子の愛撫に身を委ねるだけだった。
(もうっ! ヒナったら、じらさないで、早くクリトリスに触ってよ!)
 時折、白くなる意識の中で、彩子は思った。
 自分の1番敏感な部分、クリトリス。そこがもっとも感じる部分だと、長い付き合い
で夕子も知っている。でありながら、クレヴァスを弄ぶだけで、夕子の指は、クリトリ
スに、なかなか触れようとはしない。確かに、それだけでも十分感じるのだが、それだ
けに、更なる快感を求め、身体が疼いてしまうのだ。
 彩子は自分の口元が緩んできているのを自覚した。必死に唇を合わせようとするが、
熱い吐息と共に、唾液が頬を垂れていくのが判った。
 ”触って”と声に出して言いたかったが、一方的に攻められていくのは、何だか癪
で、それも言えないでいた。
 そんな彩子の心境を見透かしたようなタイミングだった。たっぷりと彩子の液を滴ら
せた指で、夕子が彩子の突起に優しく触れた。 
「あんっ!!」
 苦痛と紙一重の享楽が、彩子の全身を駆け巡った。ビクビクと、両足が彩子の意志に
反して震え、上半身が腹筋によって持ち上がった。
 彩子が絶頂を迎えた事は夕子にも伝わった。痙攣でもしてるかのように、細かく指を
震わし、彩子の快楽の震源である突起に、絶妙の刺激を加える。
「ぐあああっっっっ!」
 彩子はのけぞり、髪を振り乱し、唾液を垂らしながら悶え狂った。その光景は、夕子
にも、淫媚な高揚感をもたらしていた。
 夕子の指の動きが止まり、猛々しい快感が突き抜けると、彩子は力なく、ぐったりと
白く滑らかなその肢体を、ベッドに横たえた。
「はあ、はあ、はあ、はあ」
 荒い息の中、彩子の視界、に勝ち誇ったような表情の夕子の顔があった。
「イッちゃったの?」
 その問いかけに、この時ばかりは、彩子は素直に頷いた。一方的に蹂躙されたと言う
気がしないでもないが、相手が気心の知れた夕子であり、それ以上の快感を味わったの
であるから、素直になるしかなかったのだ。
 その返事に満足したように、夕子は頷き、さらに言った。
「今日は、私がサービスをするって言ったけど、あーやばっかり気持ち良くなってない
で、私にもしてよん」
 と言うが早いか、夕子は身を翻し、自らの股間を彩子の顔の上に近付け、そこにまた
がった。そして自分はと言うと、先程まで、さんざん指で弄んだ彩子の秘部に、ゆっく
りと唇を寄せた。
(わーお。こんなになっちゃって)
 夕子は内心で驚きの声を上げた。それもある意味仕方がない。彩子の股間は彼女の淫
液でしとどに濡れそぼり、髪の毛と同じ色の灰色がかった淫毛も、白い肌に貼りついて
いた。その下のベッドは、まるで失禁でもしたかのように、大きな染みを作っていた。
 もっとも、それは夕子自身がした事なのだが、それは棚に上げていた。
 夕子はさらに彩子のクレヴァスに唇を当て、舌を中に潜り込ませた。
「うぅっ!!」
 彩子の淫媚な声が室内に響く。
 だが、今度は彩子もされるがままではなかった。夕子の股間から、てらてらと光るい
くつもの筋が、左右の太ももに流れているのを見たからだ。
(ヒナのH。私は何もしてないのに、もう、こんなになってるなんて)
 彩子の思う通りだった。彩子を愛撫した夕子自身も、その行為そのもので、十分に感
じていたのだ。
「ひゃあぁんっん!」
 今度は夕子が声を上げる番だった。反撃とばかりに、彩子が硬く尖らせた舌先を、す
でにぷっくりと赤く勃起した、夕子のクリトリスに押し当てたのだ。
 暴力的な快感が、夕子の子宮を直撃する。
「あ、い、い、うああ、うむん」
 彩子が舌を動かすのに呼応して、夕子の声が変化した。
「なによ。ヒナったら、何もしてないのに、こんなになってるなんて、Hよね。
 やーらしいんだ」
 冷やかすような彩子の声に、恥ずかしさで夕子の頬が染まる。
「だ、だってぇ。あーや、Hな声でなくんだもん」
「WHAT? 何よ、私のせいだって言うの!? ヒナがそうしたんでしょ?」
 と言うが早いか、彩子は夕子の秘部に唇をあてがい、むしゃぶりついた。
「あああん!! す、すごいぃぃぃっ!」
 彩子の荒々しく、それでいて心地好い刺激に、夕子は海老ぞりになって、上体を上に
反らす。赤い瞳は開いていたが、その焦点はあっていなかった。
 だが、そんな夕子も、まるで本能が命令してるかのように、顔を下げ、彩子の股間に
沈めていく。そして、そのクレヴァスに舌を埋める。
「むぐ、むが、んんんっ!!」
 二人のくぐもった声と、びちゃびちゃと言う音が卑猥なハーモニーとなって、二人を
包む。
 互いに急所を知っているだけに、絶え間ない快感が二人に襲い続ける。先に音を上げ
たのは、夕子の方だった。
「だ、だめ・・・。もう、・・・おかしくなっちゃうよぉ!!」
 たまらず夕子はベッドの隅に置いてあった張り型を手にする。
「ねえ、もう、入れよっ。私、・・・もう、我慢できないのっ!」
 だが、彩子には、少しためらいがあった。そのため、しばらく黙っていたのだが、そ
の視界に夕子が手にした張り型が入ってきた。
「!?」
 驚く彩子に構わず、夕子はそれを自分の秘部にあてがった。彩子が嫌がるなら、その
時は自分だけで良い。ともかく、ヴァギナに硬い物を埋めたかったのだ。そして、その
我慢も限界となっていた。
 彩子の返事を待たず、夕子は張り型を持つ手に力を込めた。
「!」
 彩子は狼狽した。自分の目の前で、白い張り型が、夕子の中にズブズブと埋没してい
くのである。
「あああっ! いいっ!! これっ、すごくいいっ! サイコー!」
 夕子の悦びの声と、その異様な事態に驚きつつも、彩子はその光景から目を背けるこ
とが出来なかった。
 ついには深々と突き刺さった張り型が、まるで夕子の股間から生えた男根のようにな
る様を見るに至った。
 それはグロテスクな姿だった。バランスのとれた夕子の美しい裸体。その股間から、
狂暴ささえ感じさせる、ペニスを型どった張り型がそそり立っているのだから。
 だが、彩子の動悸は高鳴る一方だった。
(これを入れたら、気持ちいいのかな? でも、ヒナがこんなに感じてるんだから。き
っと良いのよね。・・・でも、怖いような・・・。でも)
 様々な思いが交錯した後、彩子は口を開き、切ない声を上げた。
「お願い、ヒナ。私にも、・・・これ、・・・ちょうだい・・・」
「うん。そう言ってくれると思った。嬉しいよん。・・・ちょっち、待ってね」
 半ば苦しげに夕子はそう言うと、再び身体を入れ替え、彩子の上で彼女と向き合う。
 ぎこちない手付きで、張り型のベルトを腰に巻き固定してから、身体を前に倒す。右
手で身体を支え、左手を張り型に添える。
「行くよ。痛くないように、ゆっくり行くからね」
 優しい夕子の声に、彩子は無言で頷く。
 左手で張り型を誘導し、夕子はゆっくりと腰を前に突き出す。
 すると、ほとんど抵抗もなく、するりと先端が彩子の中に潜り込んだ。そして、その
まま、ゆっくりと腰を彩子に押し当てた。
「あっ! ああああっ!!」
 夕子がびっくりするほどの音量で、彩子が鳴いた。
 夕子にとっては”するり”だが、彩子にとっては”グサリ”と言う感覚だった。
 生理用品のタンポンを使ったことはあるが、それとは全く違う硬度を持った侵入物の
感覚に、不快感のない鳥肌が立つ。
「やっ! 何これ!? すごいっ、入ってくる! お腹に入ってくる!! 
 凄いわっ!! こんなの初めてぇ!!」
「いいしょ? 気持ちいいでしょ? 痛くないでしょ?」
「うん。うん。痛くない。気持ちいいのっ!!」
「じゃ、動くよ。いいよね?」
「うん、動いて。もっと気持ち良くして」
 彩子がそう言うのと同時に、今度はやっくりと夕子が腰を引く。
「があああっ!!」
 ズリュズリュと言う窒内をえぐられるような感触に、彩子はたまらず悲鳴を上げる。
「ううぅっ!」
 それは夕子とて同様だった。固定される形になっているとは言え、自らが動くことに
よって張り型が微妙に動き、夕子の腰に恍惚とした甘美な悦びが拡がる。
 その悦びをさらに得ようと、再び夕子は腰を突き出す。
「あ、あ、あ、あ、あ」
「う、やあ、あはあん」
 違う喘ぎ声を同時に漏らし、初めての新鮮な快感に、二人は悦び溺れた。
 夕子のゆっくりとした腰の動きは、その後も続く。その度に流れる、びりびりする電
流のような快感に、彩子は身体中が痙攣するような感覚を覚えた。
 ぼうっとした意識の中で、半開きになった彩子の唇が言葉を紡ぎ出した。
「ヒナの、指も、はあはあ、気持ちいいけど、・・・これもすごいね」
「・・・」
 だが、夕子の返事はない。
「?」
 彩子が、なんだろうと思っていると、夕子が口を開いた。
「あーや」
「なぁに?」
「私、もう、ガマンできないよう。動いていい? ハアハア、もっと動かしていい。
 もう、わってイキたいよぉ!!」
 半ば泣きそうな声の夕子に、彩子は頷いた。
「OK!・・・イッていいよ。私は何回もイッてるから」
 女性のエクスタシーは、個人個人でパターンが違うと言うことを、二人は互いの違い
から知った。
 彩子は比較的時間が早くて短く、絶頂の波が何度か押し寄せるタイプであり、対する
夕子は、絶頂の来る時間が遅く、しかも1回で終わる。だが、それは彩子のそれより深
く長いようで、失神した事も1度や2度ではない。
 互いに相手のパターンが羨ましく思うこともあるが、自分のエクスタシーに不満があ
るわけでもなかった。
 そのエクスタシーを得んが為に、夕子は腰のグラインドのスピードを速める。
「あっ! あっ! あ! すごっ! ヒナ! すごいいぃぃっ!」
「うっ! うっ! いやあん! あーや! 気持ちいい! 気持ちいいのぉ!」
「もっと、もっと、もっと来て! もっとちょうだぁい!」
「うん、うん。イクよ。イッちゃうよ! 私、イク!」
「来て、来て! 私も、またイク!」
 互いの肌を求めあうかのように、二人は力強く抱き合い、互いの唇にしゃぶりつき、
舌をからめあい、チュバチュバと吸いあう。
 夕子の腰の動きに合わせ、彩子も腰を使う。ブリッジのように腰を持ち上げ、夕子の
腰に押しつけながら円を描く様に腰を振る。
 それは二人の快感を加速する動きだった。
「ヒナ、私、来てる、また来てるよお!!」
 だが、夕子はそれに答えることが出来ない。苦悶の表情を浮かべながら、絞り出すよ
うな声を上げる。
「イク、イク、イッくうっっっ!! がああああああああああっ!」
 最後は獣のような悲鳴を上げ、失禁してしまった。身体を震わせながらのけぞらせ、
ほとんど薄れつつある意識の中で、この凶暴な快感を享受した。
 ガクガクと身体が震えが大きくなったかと思うと、ばったりと夕子は倒れ込み、それ
を彩子が抱き締める。
「・・・すごく感じたのね」
 だが、夕子は答えることが出来なかった。
 
  
「う、うーん」
 夕子が目を覚ますと、そこは彩子の胸の中だった。
「あ、気が付いた? 気持ち良かったんだね?」
「うん。すごかったッスよ。ビックリしたほど」
 ベッドに横たわりながら、二人は快感の余韻を会話で楽しんだ。
「うーん。アソコの毛がゴワゴワだよ。お互い、濡れたのがすごかったからなぁ」
 自分の淫毛を右手で触りながら、夕子が言った。
「Me Too! 私もよ。ヒナ、お漏らししちゃうんだもん」
「え? うそ!?」
「ホントよ。ちょっとだけどね」
「やだー、超サイテー」
「サイコーじゃないの?」
「え? ヘヘヘ。そうかもね」
 夕子は笑って、自分の照れ臭さをごまかした。彩子が聞く。
「シャワー行ってこようか?」
「ううん。もうちょっと、こうしていようよ」
 そう言って夕子は彩子に抱きついた。彩子もそれに答える。
「ヒナ?」
「ん? なになに?」
「私たちって、レズなのかな?」
 突拍子もない話の変化に、夕子はすっとんきょうな声で言った。
「えー!? やめてよね。気持ちワルー。
 私は、ちゃんと、男の子が好きなんだからね」
「私も、男の子好きだし、そんなつもりないんだけど、良く考えてみると、これって、
そうじゃないの。 人から見れば・・・」
 そう言われ、夕子は考え直した。
「うーん。そうかも知れないけど、ちょっと違うんだよなぁ。
 まあ、いいじゃない。気持ちいいんだから」
 知っている事とは言え、夕子の、あっけらかんとしたこの性格に、少しばかり、彩子
も面食らった。だが、その意見そのものは、彩子も否定する気はない。
「OK! そういうことにしましょ。
 ともかく、ちょっとアソコが気持ち悪くなってきたから、しばらくしたら、シャワー
行こうよ」
「うん、賛成。・・・でぇ」
「で?」
「その後、またしよ」
「!? ・・・もう、しょうがないわねぇ」
 と言いつつ、彩子は同意のキスをした。
 
 
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