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契りシリーズ。朝日奈夕子編
 
 
 
  きゃーー!遅刻しちゃうよーー!!電車が雪で止まっちゃうなんて、ホワイトクリス
マスも行き過ぎだよーー!!
  今日の私は、力入ってるよーー!
  なんてったって、今日はクリスマスイブ!高校を卒業して、初めてのクリスマスなの
だ!
 長いようで短かったな。卒業式の日、超ニブイあいつに、私が告白してから、1、
2、3、・・・約10か月かあ。
 いろんな所に行ったよねえ。夏休みなんて、あいつバイトでヒーヒー言ってたっけ。
 無理言ったことも、あったなぁ。
 でも、今日は特別な日だぞ。なんて言ったって、今日は、・・・うん!

朝日奈夕子、決心しました!!

 今日、私ぃ、キャハッ!恥ずかしいなあ。
 あっと!、まわりの視線が痛い、痛い。
 急がなくっちゃ。予約しておいたお店に、ケーキと「クリスマス用のシャンパン」を
取りに行って、あいつのアパートにレッツラゴー(死語)よ!

「おお、来たか?」
 そろそろ、夕方になろうかという時、私はあいつの部屋のチャイムを鳴らした。
「なんだ、結構片付いてんじゃん」
 もっと汚いと思っていたけど、なかなかきれいになってるじゃん。この部屋。
「そりゃ、一応、女の子を部屋に通すんだから、片付けぐらいするさ」
「一応とは、あによ?一応とは?」
 なーーんか引っかかる言い方だけど、ま、よしとしよう。
「ほい!ケーキ!それからシャンパン!それに一緒にクリスマスイブをすごしてくれる
女の子」
 やーー、自分でもよく言うなあ。
「おいおい。いくらなんでもシャンパンはまずいよ。一応、俺達、まだ未成年なんだか
ら」
「もーー、固いこと言いっこなし。今日は年に1度のイブじゃない。たまにはパーっと
はめを外さなきゃ」
「夕子は年中そうじゃないか」
「あんですって?」
「いや、なんでもないよ」
 まったくう、みょーな所で真面目なんだから。
 だいたい、今日だって、私の方から誘わなきゃ、バイトへ行ってたって言うんだか
ら、ちょっと呆れちゃうわ。
 まあ、私はまだ家にいて、一応「家事手伝い」と言うことになってるんだけど、彼は
ちょっと離れた大学へと行ったのよね。
 自宅から通う事も出来たんだろうけど、近い方がいいだろうと、気ままな一人暮ら
し。
 と言えば聞こえはいいんだろうけど、実際の所は大変みたい。
 とても、仕送りだけじゃ、やっていけないから、バイト、バイトでしょ。それに加え
て、私があちこち連れまわすから、いつも金欠状態みたい。
 うう、悪いとは思ってるんだよーー。でも、でも、

一緒に居たいんだよお!!

 これでも我慢してるんだよ、自分でも驚くぐらい。
 迷惑をかけたくないって思うのよ。
 だから、せめてイブぐらい、一緒に居たいんだからね。
 これも、やっぱり、我侭なのかなあ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「それにしても、夕子がイブの事を言ったときには、どこに行くのかと思ったよ」
 シチューの鍋をテーブル(と言っても、こたつなんだよね)に置きながら、あいつが
言った。(驚いたことに自炊してるのだ!)
「それが、部屋で二人きりのパーティー?」
「ああ、正直言って意外だったな。夕子なら、もっと最新のスポットを言ってくると思
ったから」
「ちゃっちゃっちゃ、甘いなあ」
 私は右手の人指し指を振りながら、あいつに言った。
「今、もっとも最高なのは、二人っきりのキャンドルパーティーなんよ。
 だいたい、みんな同じこと考えて、ちょっと夜景のきれいなところや、はやりのレス
トランへ行くから、どこも人が一杯。ロマンティックの欠片もないわ。
 本当の、ロマンティックって言うのわぁ、だーい好きな彼とのピュアな時間なのよ」
「へーー、そうなんだ」
 ちょっとぉ。私が「だーい好き」って言ってるんだから、少しは照れるとかしなさい
よ。本当にそういう事にうといんだからぁ。
「でも、夕子がそう言ってくれて、正直なところ嬉しかったよ」
「え?ほ、本当に!?」
「ああ、年末で財布がピンチだったからね。助かったよ」
 ・・・お約束、ありがと。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「なんらとぉ、わらしのすすめるさけが、のめないっていうのかあ!」
 日本では酔っ払いは無敵なのだ。私はあいつが飲まないことを承知で、グラスを突き
つける。
「夕子、お前、酒癖悪いね」
「わるくて、わるいかあ!だいたい、あんらがいけないんよ」
「なんで、俺が悪いんだよ?」
「わかんないところが、わるいんよ!」
 もう、あいつにとっては、いちゃもん以外の何物でもないんだろうなあ。私はそのま
まの勢いで、あいつの胸に身を預ける。
「らいらい、わらしみたいな、かーいいこといっしょにいて、なんにもするきしない
のぉ?」
 あいつの顔が、バッと火がついたように赤くなる。
「ば、馬鹿!何を言い出すんだよ」
「わらしねえ、きょう、おともらちのいえにとまるから、かえんらいって、いってきた
んらよ。これ、どういういみか、わかる?」
「!」
 あいつの顔が、強ばる。さすがに判ったようだね。
「・・・夕子」
 おわあ、いい感じだあ。
「判ったよ。でも、ベッド一つしかないから、俺、このこたつで寝るからな」
 あらーーー!?
「な、なんでそうなるのよ!」
 私は思わず、真顔になってしまった。だって、ここまで鈍いなんて考えられないじゃ
ない?フツー。
「言っておくけどな、俺だって、その意味ぐらい判るぜ。だけど、酔った勢いっでって
いうのはいやなんだよ。夕子がどう考えているのか知らないけど、二人の大切な思い出
を、大切にしたいじゃないか。俺はそう思うんだよ」
 あいつはそう言って、私の身体を引き離す。
「あ、そう」
 私はいつもの口調に戻る。キョトンとした表情のあいつに、からになった「クリスマ
ス用の」シャンパンのビンを手渡す。
「たく、今どき、こんな絵に描いたような酔い方をする人、見たことないわよ。
 そのビン、よく見て」
 そこに書いてあるのは、アルコール分0%の表示。だから言ったのよ、クリスマス用
だって。
「どういう事だよ?」
「わたしねぇ、高校時代、陰でさんざん悪く言われてたっしょ?
 朝日奈は遊んでるって。今まで何人としたか知れないとか、ブルセラに行ってると
か、ひどいのになると、売春してるとかね。
 じょーだんじゃないわよ!私は、正真正銘、バージンなのに、好きかって言っちゃっ
て!」
 あ、私の中で何かが切れた。これは止まらないよ。自分でもどうしようもないもん。
「だから、告白した時、あなたがOKしてくれて、すっごく嬉しかった。
 あなたってば、遊ぶことは詳しいくせに、変に真面目だったけど、私の事を変な目で
見なかったもん。
 私、初めては、心から好きな人と、って思ってた。それで、あなたにならって思った
の。でも、あなたって、そういう事、全然鈍くって、私がサイン出しても、気が付かな
いんだもん」
「だって、そんな事、一言も言わなかったじゃないか」
「当たり前っしょ!そんな事、女の子の口から言える訳無いでしょ!
 そりゃ、こんなやり方がいいとは思わなかったけど、だってしょうがないじゃん。
 好きなんだもん!あなたが好きなんだもん!」
 せっかくのクリスマスなのに、なんでこんなになっちゃうんだろう。私、なんだか
泣きたくなってきちゃった。
「ゴメン、今日は帰るね」
 私は身仕度を整える。あいつは何も言ってくれない。あれ、視界がぼけてきた。やだ
なぁ、なんとかごまかさなきゃ。
 私はあいつに背を向ける。
「本当は怖かったの。私の方から言ったら、あなたに嫌われるんじゃないかって。
 噂通りの女の子なんだなって、思われるのがいやだったの。でも、こんなやり方は、
まずいよね。へへ、ゴメン」
 その時、私の両肩から腕がまわってきた。
「悪いと思うんなら帰るな」
 あいつが私の背中から言った。え?え?え?
「俺の方こそ怖かった。俺、金がないから、夕子をあちこちに連れて行ってやれなかっ
た。つまんない男だと思われたら、どうしようかと。だから、ずっと我慢してた。
 俺だって、夕子を抱きたいと思ったことは、1度や2度じゃない。だけど、そんな事
を言ったら、身体が目当てなんじゃないかって、言われるかもしれない。
 それで、夕子が離れて行ってしまったらと思うと、人畜無害な男になるしかないじゃ
ないか」
 私は、私の前にまわったあいつの腕を抱きしめる。
「もう、ウル馬鹿なんだからぁ、そんな事で、私が、あなたを嫌いになるわけ、ないっ
しょ?」
「それは夕子だって同じだよ。夕子の方から言ったとしたって、俺が夕子の事、嫌いに
なるわけないだろ?」
「あ!」
 なんか、頭を殴られたみたいな衝撃って言うのかな?私は思わず叫んでしまった。
「そうか、なーーんだ。お互い、怖がってたみたいね」
「そうみたいだね」
 私は顔だけ、後ろの方に振り向いた。そこにはあいつの顔があった。
「私の事、好き?」
「・・・そんな真顔で聞くなよ」
 もう、ここまで来て何言ってるのよぉ!
「好き?」
 私はもう一度聞いた。
「ああ、好きだよ。誰がなんと言おうと、俺は夕子が好きだ!」
「超うれしーーー!!」
 私は振り向いて、あいつの背中に両手をまわす。顔を上げて目を閉じる。
 わっ!、なんだろう?顔が熱くてドキドキしてる。
 空気が動いたかと思うと、私の唇に柔らかいものが触れる。あれ?へへへ。
「何がおかしいんだ?」
「だって、ケーキの味がするんだもん」
「俺は、シャンパンの味がした。アルコール分0%のな」
 そうしたら、あいつ、そのまま私を、ベッドに倒し込もうとするんだもん。
「ちょ、ちょっち、待つ!いきなりかーー!?せめて、シャワー浴びさせてよー」
「あ、ああ、そうだな」
 もう、せっかちなんだからぁ。そんなに急がなくたって、私は逃げないのに。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 うーん、石鹸がいい香り。あいつ、結構いい趣味してるじゃん。
 そんな事を考えながら、身体を洗っていると、突然、バスルームの電気が消えた。
 停電なんかじゃない。その理由は明々白々。シルエットのあいつが曇りガラスの向こ
うにいた。
「一緒に入っていいかな?」
 もう、ここまでしておいて、いいか、も、何もないもんだ。
「いいけど、ここじゃ、いやだからね」
 ああ、日本語になってない。
「判ってるよ」
 そう答えて、あいつが入ってくる。当然、裸だ。
「背中、洗ってあげるよ」
「う、うん」
 椅子に座った私の背中を、あいつは洗い始める。考えてみれば人に背中を洗ってもら
うのって、幼稚園以来じゃないかな?
 けっこう、気持ちいいもんだよな。
 あ!やっぱり!ちょ、ちょっと待てえ!
 肩を洗ってる時、やな予感はしたんだ。でも。私が何も言わないのを見て、あいつっ
たら調子に乗って、私の胸を洗い出したんだよな。
「洗うだけだよ」
 そう言うけど、そうじゃないのよ。もう、感じちゃうのよ。声が出そうじゃない。
 そんな私にお構いなしに、どんどんエスカレートしていく。ま、こうなることは、あ
る程度、判ってたけど、あいつの手はそのまま、おなか、わき腹、いったん足に行って
から、ついに来るところまで来た。
「ひゃん!」
 とうとう声が出ちゃった。だって、滑りやすくなってるのは、もう石鹸のせいだけじ
ゃないんだもん。
「だから、ここじゃ、いやだってば」
「あ?ああ、そうだね」
 シャワーで石鹸を洗い流し、あいつは私の身体を、丁寧にバスタオルでふいた。
「キャッ!」
 やっぱり男の子だなあ、あたしの体を軽々と持ち上げ、ベッドへと運んだ。
 ベッドの中で、あいつが私を優しく・・・愛撫する。テヘッ。
  だってぇ、なんか恥ずかしいじゃん。普段はニブチンのあいつが、まるでもてあそぶ
様に、それでいて、丁寧に私を扱うんだもん。
「はああん」
  胸にKISSされ、チョッピリ強く吸われた時、思わず声が出ちゃった。
  本当に声って出るもんなんだなあ。
  してもらってばかりじゃ、悪いから、私はお返しをした。あいつの胸にKISSをしてあ
げる。
「気持ちいい?」
 私は聞いた。
「ああ、気持ちいいよ」
 その答えを聞いた私は、舌で胸の突起をなめる。
「う」
 面白ーい。
「男の子も同じように感じるの?」
「当たり前だろ、好きな女の子にこんな事してもらえれば、感じないわけないだろ?」
 うーん、そんなもんなのか。私は手を下の方に伸ばす。え?
「!」
 あいつが声にならない声を上げた。
 すごい。こんなのが私に入ってくるの?熱くて固くて、大きい。
 不安そうな顔をしちゃったのかな?あいつが聞いてきた。
「怖い?」
「ううん、大丈夫。ねえ、そろそろ」
「ああ」
 あいつはそう言って準備をした。
「やん」
  あいつが私の足を広げる。な、なんかすごい格好してるぞ。
  あ!来た!
  ・・・い!いったーー!!痛いよー!!
  あいつが心配そうな顔をしてる。
「痛い?」
「う、うん。・・・でも大丈夫。そのまま・・・来て」
  あっ!ああーーん。痛い、痛いけど、なんか嬉しい。だって、これで、一つになれた
んだもん。
  私はあいつを抱き寄せる。
「お願い。もう少し、このままでいて」
「ああ、いいよ」
  あいつも私を抱きしめた。
「夕子、泣いてるの?そんなに痛い?」
  もう、本当にばかなんだから、嬉しいからなのに・・・ねえ。
  
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 夜が明けた。
 目を開けたら、そこにあいつの顔があった。
「起きてたの?」
「いや、今、目が覚めたところ」
「・・・あのね」
「なに?」
「なんか、まだ中に何か入ってるみたい」
「痛かった?」
「うん、でも・・・」
「でも?」
「やっぱり、あなたのそばにいるのが最高って感じ、かな」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おわり


後書き

この話の朝日奈と、虹野編に出てくる朝日奈は、同じ朝日奈であって、朝日奈ではあり
ません。(なんか、どこかの宗教の教祖様みたい)
実のところ、私は、この朝日奈というキャラクターが一番掴みづらいのです。
彼女はただ単に遊びたくて遊んでいるのか、それとも、何か、寂しさを紛らわすために
遊んでいるのか?なんてことまで考えてしまうのです。
暗いですか?
さて、本文中に、かなり生々しい単語が出てきました。ブルセラだとか売春だとか。
考えてみると、朝日奈って、一番、現実の普通の女子高生に近いなって思うんです。
(どうやら、そう思ってる方は少なくないらしい)
そう思って、あえて、生々しい単語を入れました。
これで、朝日奈の現実感が増してくれれば幸いなのですが。


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